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医学教養選択講義「臨床医学に役立つ複雑系科学入門」開講のお知らせ

医学教養選択講義「臨床医学に役立つ複雑系科学入門」開講のお知らせ

2019年後期から、医学部1-3年生を対象とした医学教養選択講義を総合診療科が担当します。もっとも基礎医学から遠い立ち位置とされている総合診療ですが、臓器別ではなく、「分けずに考える」臨床推論は、もっとも基礎医学そして自然科学に近いものがあります。そのなかで、臨床に直結する「複雑系科学」を通して臨床医学に触れてみる講義を企画しました。
毎週水曜日1時限で、15コマを小松史哉先生、貴島祥先生、佐々木陽典先生、瓜田純久が担当します。ゲスト講師も予定しています。学生のみんな、一緒に楽しみましょう。

 

医学教養Ⅵ 臨床医学に役立つ複雑系科学入門

【背景】デカルトの時代から自然科学の手法はできるだけ細かく、必要な要素に分けて考える還元論が主流でした。特に物理学は要素還元論により発展しましたが、計算できない複雑な現象への対応が問題となりました。20世紀になると非線形相互作用を扱う複雑系科学が誕生します。物理学は還元論では説明しきれない現象が多い生物学との距離を縮め、大きく変化してきました。単純な規則のみでリーダーの存在しない集合体の組織化されたふるまいを生む複雑系システムの研究が試みられましたが、その手法は多くのデータを集め、統計学的解析を行う臨床医学と同様な方法でした。意外に自然科学と臨床医学は共通点があるのかもしれません。

【目的】大学入試において、理科系に分類される医学部ですが、入学後に数学や物理化学の補講が必要な学生が少なくありません。補講でサポートしても、モチベーションを上げることができる医学生は限られており、何らかの対策が必要です。まもなく解剖実習も始まり、医学生は学ぶことが膨大となり、思考回路を作動させるまえに、暗記に徹しなければならない状況に陥ることがしばしばです。臨床科目の履修が始まると、入試科目の数学、物理、化学、生物で学んだ知識と臨床医学とのギャップから、自然科学への興味は萎えてしまうことになりかねません。今回、臨床医学と自然科学との接点を再認識することにより、複雑系であるヒトの病態を解明するため、柔軟な思考回路の涵養を目的として、選択講義を企画します。臨床医学のツールとして、教養科目で学んだ物理、化学、生物の延長である複雑系科学が意外に役立つことを、学生のみなさんと振り返ってみたいと思います。

【達成目標】
20世紀以降の臨床医学もパーツに分ける還元論的手法が隆盛を極め、医用工学の発展もあり、還元論的臨床医学は臨床推論の主流です。鑑別診断を挙げ、画像を含む医療情報から消去していく手法は、疾患還元論を象徴しています。しかし、疾患はヒトが定義した集合であり、この定義が正しいことが臨床推論の大前提になっています。しかし、どの集合にも納まらない症候をもつ症例に遭遇したときは、迷宮入りとなり、治療開始を躊躇しがちです。ところが、集合を撤廃して推論を進めることは、不可能ではありません。頑固な症状が持続するとき、その責任病巣、伝達経路、活性化している経路、活性化させるメディエーター、そしてそれらに対する二次的な生体反応も考え、解決の糸口を探ります。非線形相互作用は細胞間や臓器間でもみられる、生体の基本的なふるまいです。その場合、頑固な症状の原因を完全に取り除く必要はなく、現状を少し変化させ、軌道を変えるだけで回復に至る場合も少なくありません。患者さんの症候について、病名を用いずに解釈できる思考回路の構築を達成目標とします。

 

【科目概要】以下の15コマを予定しています。
1. 複雑系科学の歴史:なぜ総合診療医が自然科学に拘るのか?
2. ネットワークを考える:動脈系と気管気管支系
3. マルサス人口論から感染症伝搬モデル
4. ロジスティクス写像で考える病態:疾患は係数で表現できるか
5. セルオートマトンで考える逆流性食道炎、ポリープ
6. ゲーム理論で考える腸内細菌叢
7. フラクタル次元で考える甲状腺、消化管
8. グラフ理論で考えるリンパ節
9. パーコレーション理論で考える痛み治療
10. なぜ癌はまだらに発育するのか?:拡散速度が作る形態
11. スモールワールドネットワーク理論:シンクロが作り出す病気
12. なぜ生体は安定か?電解質で考える
13. なぜ自然治癒するのか?数理モデルで考える
14. 免疫担当細胞の分布が作り出す疾患の特徴
15. 総合診療医からのメッセージ:病名のない症候学
文責 瓜田純久

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第7回大田区総合診療研究会を開催しました。

第7回大田区総合診療研究会を開催しました。

 

11月20日(火)19:45から東邦大学医療センター大森病院 臨床講堂で第7回大田区総合診療研究会を開催しました。年2回開催している研究会ですが、会を重ねるたびに参加していただく先生が増えて、大変活発な議論が繰り広げられます。今回は「薬剤耐性」をテーマとして、感染症科レジデントの佐藤高広先生が多くの医療機関で治療されても改善しなかった30歳代の発熱患者さんを取り上げ、細菌性心内膜炎の難しさを皆で改めて共有することができました。

佐藤先生の講演後、師匠の前田先生、そして小松先生、石井先生と討論に臨みました。会場の先生から、発熱に関する抗菌薬の適性使用、血液培養検査に対するクリニックの対応の困難さなど、本研究会ならではのざっくばらんな討論が繰り広げられました。次回もぜひ抗菌薬について、取り上げて欲しいとの声が多く聞かれました。

討論後はボーノに移動し、懇親会が開催されました。

懇親会は、普段患者さんを紹介してくださる先生方と、直接お話できる貴重な機会です。研修医の先生も多勢参加してくれました。ビールを飲みながら、ウイルス疾患、細菌性疾患の病歴や問診のやり方、ウイルスと思っても、抗菌薬を希望する患者さんが多い事など、地域の先生ならではの悩みと柔軟な対応を聞くことができました。研修医の先生もとても勉強になったことと思います。

 

次回は春に予定されていますが、「紹介状と返信について」お願いしたいとの声もありました。地域密着の本研究会ならではのテーマです。また楽しく有意義な研究会となるように、工夫して参ります。

重ねてご指導いただきたく、お願い申し上げます。

 

                               文責 瓜田純久

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11月17日に第5回臨床複雑系フラクタル解析学会に参加してきました。

11月17日に沖縄の宜野湾で開催された、第5回臨床複雑系フラクタル解析学会で講演をさせていただきました。

今回私は甲状腺超音波画像検査の定量的数理解析について発表を行ってまいりました。

相似性を利用したフラクタルは対象画像の複雑さや緻密さをフラクタル次元として定量的に表現することができます。

今まで主観的に評価されてきた画像の中で、罹患率の上昇してきている甲状腺癌の超音波画像の定量的な評価が可能か検討を行いました。その結果からは甲状腺癌で有意にフラクタル次元を上昇を認めており、定量的評価の可能性が示唆されたと考えております。

会場からは愛媛県立中央病院の井上武先生をはじめとしてご質問をいただき、今後の研究の課題を指摘して頂き大変有意義な発表となりました。

併せて会場ではテクスチャー解析、フラクタル解析とCADの組み合わせなど様々な画像解析を用いた発表に加え、高橋由武先生による潜在クラス分析および人工知能の講演、そしてSONYのNeural Network Consoleを用いてDeep learnigを実演していただくなど大変勉強させて頂きました。

また会の最後には減圧症を予防するダイブコンピュータの開発者でおられる今村昭彦先生に市民公開講座が開かれました。

現在様々なAIを利用した画像診断のソフトウェアの研究が進んでおり、様々な画像解析を学ぶことができたこの会に参加することができ今後の研究の糧になりました。

来年度は愛媛で開く予定とのことであり、興味をお持ちの方は参加を検討されてはいかがでしょうか。

文責:小松

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10月6日に第8回東邦JMECCを開催致しました。

今回は18名の受講生を迎え、いつもお世話になっている藤沢市民病院の西川先生にディレクターとしてご指導いただき、更に佐倉病院の美甘先生に第3ブース長をお務めいただいて3ブースで開催させていただきました。

 

新しく生まれ変わったシミュレーションラボで初めての開催であり、綺麗で広い会場に感動し、指導にも熱が入りました。

 

JMECCの取得は新内科専門医取得の必須条件であり、自施設での開催も重要ですが、大森病院のインストラクターは院長と石井先生、私の3名のみで、他科からの参加者がおらず、人手不足が続いています。今回は公務で欠席となった瓜田院長の穴を埋めるべく、他院に出向中の当科の若手がアシスタント・インストラクターとして参加してくれました。これでなんとか東邦JMECCを引き継いでいけるのではないかと安堵しました。

 

JMECCのインストラクションは時間管理が重要であり、まだまだ未熟ですが、後輩達と楽しい運営を続けられるようにディレクター取得に向けて引き続き研鑽を積みたいと感じました。

 

ご参加くださったインストラクター、アシスタント・インストラクター、受講生の皆様、そして並木先生、平田さんを始めとした運営事務局の皆様に感謝申し上げます。

 

 

ランチョンセミナーでは新しく生まれ変わった第1セミナー室でシミュレーション教育について並木先生にご講演いただきました。

画像教材に見入っている受講生の皆さん。

 

文責:佐々木

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10月12日にTokyo GIM conference 72で症例提示をさせていただきました。

10月12日にTokyo GIM conference 72で症例提示をさせていただきました。

世話人の先生から下記の通り、大変ありがたいお褒めのコメントをいただきましたのでシェアさせていただきます。

大学病院での仕事では自信を砕かれることも多く、無力感に苛まれておりましたので、このようなコメントをいただき、とても励まされました。

 

今回は研修医の先生と医局の上司も参加して議論を盛り上げてくれたこともとても嬉しかったです! 研修医の先生も楽しんでくれたようで、それが一番の収穫だったかもしれません。

 

今後も是非仲間とともに参加して、機会があれば症例提示させていただき、参加されている先生方の素晴らしい知識・経験・情熱を分けていただきたいと思います。学内でご興味のある方や興味深い症例を経験された方は是非お声かけ下さい。

 

文責:佐々木

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