2026/06/18
東邦大学医療センター大森病院でJMECCを開催しました
6月14日(日)に東邦大学医療センター大森病院において第18回東邦大学JMECC(Japanese Medical Emergency Care Course:内科救急・ICLS講習会)を開催しました。
JMECCは、心停止への対応に加え、緊急性の高い内科疾患に対する初期評価と対応を体系的に学ぶ教育プログラムであり、内科専門医の取得に必要な講習の一つです。
今回は、日頃より大変お世話になっている西川正憲先生(藤沢市民病院前院長)にディレクターとしてお越しいただきました。西川ディレクターのもと、一流の指導者である小山雄太先生(吉祥寺あさひ病院)、泉谷昌志先生(東京大学)にもご指導いただきました。
また、本学でJMECCの開催を始めた当初から継続してお力添えをいただいている石井孝政先生(獨協医科大学埼玉医療センター)、美甘周史先生(東邦大学医療センター佐倉病院)にもお越しいただき、充実した指導体制のもとで講習を実施することができました。
本学のJMECCは、これまで前任の瓜田純久教授のリーダーシップのもと、総合診療科が中心となり、学外の指導者の先生方のお力を借りながら、企画・運営を一手に担ってきました。長年にわたり本学の内科医教育を支えてくださった瓜田前教授と、継続してご協力いただいてきた学内外の先生方に、改めて深く感謝申し上げます。
今回の開催で特筆すべき点は、近年では最も多くの東邦大学所属の先生方に、指導者として参加していただいたことです。これまで学外の先生方に支えていただきながら積み重ねてきたJMECCが、学内の指導者の育成と参加の広がりによって、次の段階へ進みつつあることを実感する機会となりました。
JMECCで扱われる重要なテーマの一つに、院内で急変の兆候を早期に察知し、重篤化する前に組織として対応するRapid Response System(RRS)があります。当院においても、総合診療科は内科救急への対応にとどまらず、病院全体の急変対応を支えるRRSの一翼を担っています。講習で学ぶ知識や技術を、個々の医師の救急対応能力の向上だけでなく、病院全体の患者安全の向上につなげることが重要です。
内科専門医の育成に不可欠なJMECCを、東邦大学の内科医が自ら指導し、次の世代の内科医を継続的に育てられる体制を構築することは、本学の診療と教育の質を高めるうえで大きな意義があります。
今後も、これまでご支援いただいてきた学外の先生方のお力をお借りしながら、診療科や病院の垣根を越えた学内の連携をさらに深め、将来的には東邦大学が主体となってJMECCを安定して開催し、自らの手で内科医を育成できる体制づくりを進めてまいります。
ご多忙のなか、ディレクターおよび指導者としてご参加いただいた先生方に、心より御礼申し上げます。
文責:佐々木 陽典
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2026/06/18
総合診療医の多様な活躍の場を学ぶ講義を開催しました
6月15日に医学部4年生を対象に、それぞれ異なる現場の第一線で活躍する総合診療医を講師に迎え、グループワークを交えた講義を行いました。
講師を務めていただいたのは、沖縄県立中部病院、沖縄県立八重山病院、南大東診療所での勤務を経て、現在は生協浮間診療所で家庭医として活躍されている菊池徹哉先生、同じく沖縄県立中部病院で研鑽を積み、現在は大田区を拠点に在宅診療の若き担い手として活躍されている田代和馬先生、そして当科の若手医師である繁田先生の3名です。
1限目は、菊池先生から、僻地や離島などの医師少数地域における総合診療医の役割についてご講義いただきました。
家庭医療は、病気を生物医学的な側面から診るだけの医療ではありません。菊池先生からは、家庭医療学の先駆者であるマックウィニーが示した、他領域にはない4つの視点:「関係性に基づいた診療」、「個別の患者で考える視点」、「有機体論的な生物学」、「心身二元論を超越する視点や、MillerとCrabtreeが示した「患者の4つの顔」という考え方が紹介されました。患者さんは、細胞・臓器・病態から捉える「生物としての身体(Human Animal)」であると同時に、固有の生活史や人間関係、人生の意味をもつ「人としての存在(Person)」でもあります。また、制度や情報、費用などを考慮しながら、自ら受ける医療を選択する「医療を選ぶ人(Techno-consumer)」という側面をもち、不安や喪失、孤独を抱える「苦しむ者(Patiens)」でもあります。
特にプライマリ・ケアでは、これら4つの側面のうち、どれか一つだけを優先して診療できるとは限りません。生物医学的な問題への対応だけでなく、その人の生活や価値観、医療を受けるうえでの現実的な条件、さらには患者さんが抱える苦しみにも目を向け、それぞれを同じ重みで捉えることが求められます。
菊池先生からは、こうした家庭医療学の考え方が、医療資源の限られた僻地や離島において、目の前の患者さんと地域を支える実際の診療にどのように生かされているのかを、豊富なご経験と具体的な事例を交えてお話しいただきました。
2限目は、田代先生から、都市部のコミュニティにおける総合診療医の役割についてご講義いただきました。本学のある大田区・大森周辺の実例を踏まえながら、高齢化、独居、生活困窮、社会的孤立など、東京という大都市が抱えるさまざまな課題と、それらに向き合う在宅医療・総合診療の可能性について、熱のこもったお話をいただきました。
また、患者さんが抱える不安を丁寧に分析し、その中にある「未知への不安」を一つずつ減らしながら、安心を積み重ねていくことこそが医療である、という田代先生の信念も語られました。病気を治療するだけでなく、患者さんがこれからの生活を見通せるように支えることの大切さを、具体的な診療事例を通じて学生たちに伝えていただきました。
3限目は、当科の繁田先生から、時に「大学病院には必要ない」と言われることもある総合診療医が、大学病院の中でどのような役割を果たしているのかについて、「継続性」を軸に講義していただきました。
診断や治療だけでなく、患者さんの経過を継続して見守り、複数の診療科や院内外の医療をつなぐことも、大学病院における総合診療医の重要な役割です。また、複数の疾患や複雑な生活背景をもつ患者さんに対応する総合診療では、医師だけで問題を抱え込むのではなく、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、リハビリテーション専門職などと協働する多職種連携が、特に重要であることについてもお話しいただきました。
各講義ではグループワークも行われ、学生たちは具体的な事例について自ら考え、互いに意見を交わしました。それぞれ異なるフィールドの第一線で活躍する先生方による、実例に基づいた講義が、学生たちに何らかの新たな気づきを与える機会となったことを願っています。
離島・僻地、都市部の在宅医療、大学病院と、働く場所によって総合診療医の仕事や求められる役割は異なります。しかし、その背景には、患者さんを病気だけでなく、その人の生活、家族、地域、価値観まで含めて捉えようとする「General mind」や、不確実な状況から逃げず、患者さんのために一歩を踏み出す「Clinical courage」といった、共通する価値観と信念があります。今回の3限の講義を通じて、学生たちがその共通した精神を感じ取り、今後の学びや医師としての歩みにつなげてくれることを期待しています。
さらに6月23日には、米国で総合内科医として活躍され、病歴聴取、身体診察、臨床推論のエキスパートであり、私自身の師でもある金城紀与史先生をお招きし、2限連続でご講義いただく予定です。引き続き、総合診療の魅力と奥深さを、第一線で活躍する先生方から直接学ぶ機会を学生たちに提供してまいります。
文責:佐々木 陽典
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2026/06/18
呼気中の成分を用いた前立腺がん診断に関する研究論文が掲載されました
当科で取り組んできた、呼気中の成分を用いた前立腺がん診断に関する研究論文が、国際学術誌「Asian Pacific Journal of Cancer Prevention」に掲載されました。(https://journal.waocp.org/?sid=Entrez:PubMed&id=pmid:41793654&key=2026.27.3.779)Sasaki Y, Matsumura T, Shitanaka Y, Urita Y. Breath Aldehyde Profiling using PFBHA-GC/MS as a Prostate Cancer Biomarker. Asian Pac J Cancer Prev. 2026;27(3):779-782.(邦題:前立腺がんバイオマーカー探索を目的としたPFBHA-GC/MSによる呼気アルデヒド分析)前立腺がんの検診では、一般的に血液中のPSAという値が用いられています。しかし、PSAが高くても必ずしもがんとは限らず、診断を確定するために身体への負担を伴う前立腺生検が必要となる場合があります。そのため、より簡便で身体への負担が少ない検査方法の開発が求められています。今回の研究では、人が吐く息の中に含まれる微量な化学物質に着目しました。がん細胞の代謝などによって生じる可能性がある12種類の「アルデヒド」を測定し、前立腺がんの患者さんと、前立腺がんが認められなかった方との間に違いがあるかを検討しました。その結果、今回用いた測定方法では、呼気中の個々のアルデヒド濃度から前立腺がんの有無を判別することはできませんでした。また、多くの成分が非常に低い濃度で存在しており、現在の測定装置では十分に検出できないことも明らかになりました。一見すると否定的な結果ですが、呼気による前立腺がん診断を実現するためには、単一の成分だけを調べるのではなく、より高感度な分析装置を用いて複数の成分を組み合わせて評価する必要があることを示した、重要な基礎的知見と考えています。呼気検査は痛みを伴わず、繰り返し実施できるため、将来的には血液検査や画像検査を補う検査方法となる可能性があります。本研究を進めるにあたり、ご指導いただきました瓜田前教授、日本大学の松村先生をはじめ、共同研究者の先生方に心より御礼申し上げます。また、本研究にご理解とご協力をいただきました患者さんならびに関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。今回得られた知見を生かし、呼気検査による身体への負担が少ない診断の開発に向けた研究を継続してまいります。
文責:佐々木 陽典
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2026/04/04
当科若手医師による症例報告が学会誌に掲載されました
このたび、当科の若手リーダーとして日々診療・教育・研究を牽引している小松史哉先生が筆頭著者として執筆した症例報告が、日本病院総合診療医学会公式英文誌 Journal of Hospital General Medicine に掲載されました【J Hosp Gen Med 2026;8(2):83-88】。
論文タイトルは“Immune checkpoint inhibitor–related myositis initially presenting with fever alone”「発熱のみで発症した免疫チェックポイント阻害薬関連筋炎の一例」です。
本症例は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与後に発症した筋炎でありながら、初発症状が「発熱のみ」であった点が特徴的です。筋痛や嚥下障害といった典型的な筋炎症状は遅れて出現しており、当初は原因不明発熱(FUO)として精査が進められました。その後、MRI所見や臨床経過、各種鑑別の除外によりICI関連筋炎と診断され、速やかなステロイド治療により改善が得られました。
本症例は、ICI関連筋炎のような稀な免疫関連有害事象(irAE)が、非特異的な症状のみで発症しうることを示すとともに、「診断に至るまでの経時的な情報の蓄積」と「繰り返しの臨床評価」の重要性を強調するものです。特に、発熱というありふれた症候の背後に重篤な病態が潜む可能性を常に念頭に置く総合診療医の視点が、診断に大きく寄与した意義深い報告といえます。
さらに本論文では、腫瘍随伴筋炎とICI関連筋炎の鑑別に関する整理された比較表も提示されており、両者の臨床的特徴、発症時期、検査所見、治療反応の違いを体系的に理解できる実践的な内容となっています。この点も、本症例報告の学術的価値を一層高める重要なポイントです。
本研究成果は、日常診療の中での違和感や疑問を丁寧に追究し、学術的成果へと昇華させる当科の文化を体現するものです。小松先生のリーダーシップのもと、若手医師が主体的に学び、発信する好循環が生まれていることを大変誇らしく思います。
小松先生、このたびは誠におめでとうございます。今後のさらなるご活躍を心より期待しております。
文責:佐々木 陽典
MRI所見(○部分に筋炎を示唆する高信号域が認められます。)
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2025/11/15
【市民公開講座のお知らせ】 「なんとかしたい!こむらがえり」(12月6日開催)
このたび、東邦大学医療センター大森病院にて、地域の皆さまを対象とした市民公開講座「なんとかしたい!こむらがえり」 を担当させていただくことになりました。
ふくらはぎが突然つる「こむら返り」。夜間や明け方の強い痛みに悩まされている方は、少なくありません。多くは一過性の症状ですが、実は生活習慣や体の状態、さらには病気や内服薬の影響が関係していることもあります。
本講座では、
こむら返りが起こる理由
受診を考えるべきサイン
日常でできる予防法
医療機関での対応や最新の研究知見
などについて、できるだけ分かりやすく解説し、皆さまの「困った!」に役立つ情報をお届けしたいと思います。ぜひお気軽にご参加ください。お会いできることを楽しみにしています。
■ 開催概要
日 時:2025年12月6日(土)13:00〜14:30(開場12:30)
会 場:東邦大学医療センター大森病院 5号館 地下1階 臨床講堂
定 員:120名
参加費:無料
申込み:予約不要。当日会場へ直接お越しください。
講師:東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター 教授 佐々木 陽典
https://www.omori.med.toho-u.ac.jp/kokai_koza/j8uar50000000k34-att/20251206.pdf
■ お問合せ
東邦大学医療センター大森病院 総務課TEL:03-3762-4151(平日9:00〜17:00)
文責:佐々木 陽典
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