2023/11/25
第87回高田塾で講演させていただきました。
11月9日(木)に日本プレスセンターの9階の日本記者クラブ会場で日本テレビの報道局解説委員の高田和男塾長が中心となって様々な時事問題を議論する『高田塾』で講演する機会をいただきました。
6月の日本医療マネージメント学会での教育講演終了後、会場にいらした高田塾長から、「高田塾」での講演を依頼されました。多くの国会議員の方々も数多く講演してきた伝統ある高田塾です。理事長先生のお力で大学から30名以上の関係者が参加してくださいました。
医師人生に大きく関わった文献を紹介しながら、研究の流れを紹介させていただきました。
分業が進む現代の医学ですが、臨床医の本当の役割についてもお話させていただきました。
非侵襲的な呼気試験と出会ったがことが開業医時代の研究を支えてくれました。
動物実験は大学復帰の大きなモチベーションとなりました。学生時代からお世話になった今井常彦先生にご指導いただき、多数の実験を進めることができました。
大学復帰のもう一つのモチベーションとなったのは、教育でした。複雑系科学は開業医時代に出会った本から芋つる式に読み進めた文献をもとに、医学知識がなくても病態を簡単な数式や演算で説明する方法をまとめていました。その内容を学生に伝えるには、大学に復帰しなくては叶いませんでした。この内容は「数理の翼」の分科会で講演する機会もいただきました。
働き方改革ではデジタル化すれば仕事が少なくなるように喧伝されていますが、実は逆に仕事が増えている現状についても説明させていただきました。
最後に臨床哲学と臨床医学の接点について述べて、終了となりました。医学の講演と異なり、完全に「独学の世界」であった臨床哲学、複雑系科学の講演はとても緊張しました。それでも講演が始まると、これまで話したくても話す機会のなかった内容でしたので、只々高田塾長に感謝しながら、思いの丈を吐き出す講演となりました。
参加いただいた皆様、遅い時間までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
文責 瓜田純久
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2023/11/25
大森祭で公開講義を行いました。
10月14日・15日の2日間に渡り、医学部と看護学部合同で開催された東邦大学大森祭において、「19番目のカルテ:総合診療」と題して公開講義をさせていただく機会をいただきました。
9月に医学教養6で講義を行なってくれた甲藤先生から教えていただいた「19番目のカルテ」です。この講義が決定してから、慌てて古本屋さんから原書?を購入しましたが、1巻を読んだだけで積読状態となっています💦
これまで、多くの診療科で原因不明とされて当科に紹介された患者さんの中から、印象に残る症例を中心に講義を進めていきました。
医学の発展のためとして、大事なことと知りつつ、敢えて見ないふりをしてきた領域が確かに存在します。
多くの情報から普遍的法則を探索する近代医学ですが、臨床現場は個別的命題から演繹的に論理を展開していくことが求められます。標準的治療で改善しないときに、初めて臨床医の本領が発揮されます。
演繹的思考には、基礎医学だけではなく、忘れがちな物理化学的な思考回路の動員も大きな助けとなります。
高校生のような単純な思考回路に戻って、論理を展開する症例についても紹介しました。
レヴィ・ストロースは「野生の思考」において、普遍的な認知的テンプレートから出来事を説明する概念的思考を批判し、感覚から切り離されない具体的なもの(動植物)を使って考える「具体の科学」を挙げて、「認識の二様式」の並立の重要性を述べています。総合診療にとって、極めて示唆に富む主張です。
「具体の科学」が解決してくれる場合、魔法が解けたような感覚を訴える患者さんも少なくありません。
時間の限られた医療現場では、思考回路を柔軟に展開する余裕がなく、「文字を追いかける」言語活動の道具化が懸念される場面に遭遇します。
「臨床」とは何か、改めて考えさせられることは、医師ならば誰でも少なくないと思います。
多くの方々が日曜日の午後という時間に参加して下さいました。「19番目のカルテ」は医学部を目指して受験勉強していた頃の想いを形にした講義でした。貴重な機会を頂いた大森祭実行委員の皆様、ありがとうございました。
文責 瓜田純久
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2023/09/24
初期研修医3名が熱い講義をしてくれました!
医学教養6「複雑系科学」を担当して5年。今年が最後の講義になります。臨床医が複雑系科学の講義をすることに、基礎医学の先生に何となく後ろめたさを感じながらの5年でした。
15コマの講義の最後2コマは、試験と再試験の時間でしたが、試験はやめました。それより、大学の将来を担う研修医に講義を経験してもらうことにしました。
9月6日は東京医科大学八王子医療センターの初期研修医 甲藤先生です。
甲藤先生は昨年に続き、2回目です。今回は「19番目のカルテ」を教えてくれました。
来年から総合診療医として活躍する甲藤先生、その意気込みを感じる講義でした。昨年も期せずして学生から拍手が湧きましたが、今回も拍手喝采でした。質問は途切れず、講義は大きく延長してしまいました。大森学園祭のモデル講義のタイトルは「19番目のカルテ」にしました。甲藤先生、ありがとうございました。
翌週、13日は大森病院初期研修医3名の熱い講義です。総合診療を4ヶ月選択してくれた3名は学生への想いの詰まった講義をしてくれました。
トップバッターは森先生。川崎医大から大森病院に来てくれました。妹さんが手術室の看護師さんだと初めて知りました。「しくじり先生」だと話し、学生さんのハートを鷲掴みにしていました。
講義後の質問も森先生にたくさんいただきました。
2番手は高野先生です。
総論から各論へ、絶妙の流れで講義が展開されました。講義の最後には、学生へ大きなエールを送ってくれました。
最後は金先生です。歴史、哲学が好きだと話す金先生の講義、学生は静まり返って聞いてくれました。
次年度は大森病院を希望する学生さんが、過去最高を記録しています。今回講義をしていただいた先輩の背中をしっかり見てくれていると痛感し、嬉しく思いました。学生さん、先輩達はすごいですよ。
学生の心に響く講義をありがとうございました。
文責 瓜田純久
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2023/09/17
9月19日放送予定のNHK Eテレ「きょうの健康 足のつり」に出演致します。
以前にNHK Eテレで放送された腓返りに関する「チョイス@病気になった時」に出演させていただいたご縁で、9月19日 20:30-20:45にNHK Eテレで放送予定の健康情報番組「きょうの健康 シリーズ過程の医学 足がつる」に出演させていただきます。https://www.nhk.jp/p/kyonokenko/ts/83KL2X1J32/episode/te/LGNZV7XPNN/15分と短時間の番組ですので、ご興味のある方はご笑覧いただけると幸いです(テレビで見るとさらに太って見えるのでないかと心配しております…)。番組の内容についてご興味のある方は健康情報雑誌「きょうの健康 9月号(NHK出版)」をご覧ください。https://www.nhk-book.co.jp/detail/000016491092023.html
文責:佐々木 陽典
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2023/09/04
第27回日本病院総合診療医学会が日本医大で開催されました。
8月26日(土)27日(日)の2日間、第27回日本病院総合診療医学会が日本医科大学 橘桜会館・教育棟にて開催され、多くの参加者が千駄木に集結しました。日本医科大学医学部長 安武正弘教授が会長を務め、コロナ感染第9波の影響を考慮して、ハイブリッドでの開催となりました。
前日の理事会懇親会は上野の由緒ある韻松亭で開催されました。歴史ある日本医科大学と同様に重厚な作りの日本料理で、大広間の柱や梁を見て、思わず刀傷を探してしまいました。
学会初日の第一会場では、JUGLERセッション「症例検討から学ぶ診断推論戦略」で佐々木先生が登場しました。獨協医大の志水教授とともに、臨床推論を進め、ツツガムシに辿り着くまでの多様な思考回路が展開されました。
その時間、第4会場では小松先生が神経セッションの座長を担当しました。小松先生はNHKアナウンサーのような落ち着いた話し方で、発表する演者のよさを引き出してくれました。
午後は若手医師と病院総合診療医像・専門医制度について議論するシンポジウムが組まれ、佐々木先生が参加し、熱い議論が展開されました。
会場となった日本医大は救急救命センターが有名ですが、当日も救急車が横付けにされ、患者さんが搬送されていました。
二日目は「Society 5.0時代における総合診療医育成のGood Practice 」に三たび佐々木先生が登場。このセッションでは大学医学部教育から教養科目が大きく削減され、臨床実習が前倒しされている現状の問題点が討論されました。順天堂大学の高橋先生が哲学の古典である「トロッコ問題」を取り上げて発言され、千葉大学の鋪野先生から、今後の医学教育には「医学と哲学」という領域が登場することが示されました。日本の大学では人文系学部が大きく削減され、明日役立つ実学に偏在してきた歴史があります。我々臨床医が人文系まで広く学び、学生と議論することができることが求められている時代となりつつあるようです。
最後のセッションでは「若手医師と臨床研究、論文執筆などのアカデミック活動について議論するシンポジウムー臨床研究の未来を探る」が開催され、佐々木先生がJUGLERメンバーと次世代の若手医師と夢を語ってくれました。
会場となった日本医科大学橘桜会館には大学の歴史資料が数多く展示されていました。済生学舎から日本医科大学、東京女子医科大学、東京医科大学が分かれていった変遷は圧巻でした。
卒業生として野口英世が紹介され、制服も展示されていました。
また、同所は夏目漱石旧居跡でもあり、様々な歴史に思いを馳せる機会となりました。
それにしてもChat GPTを使った臨床推論のスピードと情報量には度肝を抜かれました。現病歴を英語で入れると10秒足らずで鑑別診断や治療法などが提示され、日本語変換をクリックすると、数秒で日本語になりました。AIを利用した診断は医師だけではなく、患者さん自身も十分活用できるクオリティです。患者さん自身がAIで診断し、薬局に薬を買いに行く時代になるのでしょうか?
95年前にケインズが20世紀末までに英国・米国ではテクノロジーの進歩により、週15時間労働が達成されると言っておりましたが、デジタル化は情報のアウトプットを指数関数的に増加させ、それを目視で確認するという膨大なアナログ作業を生み出してしまいました。AIの登場により、この傾向がさらに加速していきます。AIを使った診断治療という作業に習熟する一方、思考の空洞化を懸念しているのは私だけでしょうか?
佐々木先生、小松先生、週末返上で大変お疲れ様でした。次回は博多での開催になります。
文責 瓜田純久
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