2025/07/11
広報誌「おかげさん」に胸痛に関する当科の診療に関する原稿を掲載していただきました。
当院広報誌「おかげさん」11号への頭痛に関する記事に引き続いて「おかげさん」13号に、胸痛に関する当科の診療に関する原稿を掲載していただきました。
こちらにも掲示させていただきます。
文責:佐々木 陽典
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
胸痛で迷ったら――緊急疾患から心因性まで幅広く対応いたします。
総合診療・急病センター
胸痛は遭遇する頻度が高く、それでいて、診療が難しい訴えの一つです。その理由は、原因が多岐に渡り、診断が難しいうえに、急性心筋梗塞に代表される命に関わる緊急疾患が含まれているからではないかと思います。診療所や外来では、精密検査や経過観察が難しく、「この胸痛の患者さんを帰宅させても大丈夫だろうか?」と悩むことは少なくないと思います。
実際には、胸痛の原因としては肋軟骨炎(筋力トレーニング後)等の筋骨格系の疾患が40%前後と最も多く、次いで、心因性が30%前後を占め、逆流性食道炎等の10% と合わせると、これらの原因が80%を占めると報告されています。一方、急性心筋梗塞等の危険な疾患は全体の5%前後と、決して多くはありません。しかし、見逃してしまえば命に関わりますので、診療に関わる医師は常に「危険な胸痛ではないか?」というプレッシャーにさらされることになります。
当科では、循環器内科、心臓血管外科、呼吸器内科、呼吸器外科、救命センター等と緊密に連携をとりながら、心電図、血液検査、エックス線検査、CT検査を駆使して迅速に危険な胸痛 Killer chest pains:急性冠症候群、大動脈解離、肺塞栓症、(緊張性)気胸の除外を進めつつ、筋骨格系疾患、胸膜疾患、逆流性食道炎、心因性胸痛まで、幅広い鑑別診断のなかから胸痛の原因を探り、患者さんの安全・安心・症状緩和に努めております。緊急疾患から不定愁訴まで、患者さん毎に求められるスピード感に併せて診療を進められることが当科の強みだと考えております。
胸痛の診断でも病歴聴取と診察は極めて重要であり、例えば症状の持続時間だけでも、数十秒なら肋間神経痛、3分以内ならPericardial catch syndrome、30分以内なら狭心症、パニック発作、30分以上なら気胸、大動脈解離、肺塞栓、急性心筋梗塞といった具合に、鑑別診断を絞ることができます。患者が痛みを訴える胸の高さの背中を診ると水疱があり、初期の帯状疱疹と診断される症例も少なくありません。
「このまま帰宅させて大丈夫だろうか?」と心配な患者さんがいらしたら是非お気軽に総合診療科にご相談ください。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
詳しく見る
2025/07/11
7月5日に佐賀大学医学部附属病院総合診療部の同門会で講演する機会をいただきました。
7月5日に佐賀大学医学部附属病院総合診療部の同門会で講演する機会をいただきました。お招きくださったのは、私が活動する JUGLER(Japan University General medicine Leadership and Education Roundtable)の創設者であり“兄貴分”でもある多胡雅毅教授です。同部門は1986年に国立大学で初めて総合診療部が設置された草分け的存在で、来年には創設40周年を迎えます。hospital.med.saga-u.ac.jp
(JUGLER は大学病院総診で働く若手リーダーが集い、「日本の総合診療におけるリーダーシップと教育を議論し、病院総合診療医の理想像を描く」ことを目的に2018年に結成され、専門医制度のコアモジュール作成や診断推論セッションの企画を通じて全国の総合診療の発展に寄与しています。jugler-gm.com)
私の登壇に先立ち、米国内科学会(ACP)日本支部の年次総会・講演会で最優秀演題に贈られる学術賞である黒川賞を受賞した本村壮先生が非感染性炎症性疾患の早期診断に関する研究成果についてご報告され、特定講師に昇任された香月尚子先生からは研究のためのチームビルディングに関する実践知を共有していただきました。
同門会では、かつて前教授の瓜田純久先生も招かれており、両講座の強いつながりを改めて確認できたことも喜びの一つでした。
私は「大学病院で総合診療をするということ」と題し、臓器別組織再編に伴って2003年に創設された当講座が、専門至上主義的だった当時の過酷な環境の中で、いかに今日まで講座を存続・発展させてきたのか、先人たちの苦労と努力を振り返り、大学病院は高度先進医療を行う専門医集団であると当時に、「医学生・研修医が最初に患者さんに触れ合う教育病院」であることの重要性に触れ、大学病院の診療の特殊性は初心者への教育に適合しない側面があることから、大学病院でこそ総合診療医が教育者として活躍し、専門医に囲まれた環境で総合診療医がやりがいを持って働く姿を学生や研修医に示す重要性等についてお話をさせていただきました。また、都会にも離島にもcommunityが存在すること、従って総合診療・地域医療は診療の場所ではく、clinical courage, accountability, lastmanship, そして主治医医感などの言葉で表されるGeneral mindに基づいていることについて強調させていただきました。
加えて、大学病院総合診療科は日本全体の総合診療の普及のために、研究成果を示すことが使命であり、AI の進歩が加速する時代だからこそ病歴聴取と身体診察という古典的手技が最重要の診断技術として再評価され、総診由来の研究が注目を浴びる可能性についても私見をお伝えし、卒前教育を市中病院にも広く開放し“教科書には載らない景色”を学生に見せることで、国民が求める医療人を大学と地域が連携して育む必要性についてお話させていただきました。
また佐賀大学総合診療科同門会の先生方にも、ぜひ私が代表世話人を務めているTokyo GIM conferenceにご参加いただくよう宣伝もさせていただきました。 (Tokyo GIM conference FBページ)
拙い内容ですが、皆様、真剣に聴いてくださり、時に笑いもあり、和やかな雰囲気の中でお話をさせていただくことができました。
講演後の懇親会では、地元の名酒である「鍋島」を楽しみながら、佐賀大学総診同門会の先生方と総合診療医のキャリア形成や地域医療連携の在り方について活発に意見交換することができ、大変有意義な時間となりました。このたびの貴重な機会をくださった多胡教授をはじめ、同門会の先生方に心より御礼申し上げます。
当講座も JUGLER ならびに全国の総診ネットワークと力を合わせ、診療・教育・研究の三位一体で総合診療の未来を切り拓いてまいります。
文責:佐々木 陽典
日頃活動されている佐賀大学附属病院総合診療部同門会メンバーはこの写真の倍以上とのことであり、その人数と活気から伝統の重みを感じました。
やっぱり瓜田前教授は佐賀でも人気者でした。
ハイブリッド開催で遠方からご視聴いただいた先生方もいらっしゃいました。
懇親会は大変和やかで楽しく、とても素敵な時間をご一緒に過ごさせていただくことができました。
この度ご招待いただいた多胡教授と JUGLERのリーダーであり、私の大切な兄貴分です。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
詳しく見る
2025/07/05
東邦大学エコー研究会が「第3回 Student POCUS League」出場に向けて特訓中です!
このたび、本学の医学生の有志が「東邦大学エコー研究会(TOHO Echo Study Group)」を立ち上げ、学生対象の超音波競技大会「第3回 Student POCUS League」への出場に向けて、日々トレーニングに励んでいます。
Student POCUS League(SPL)は、全国の医学生がPoint-of-Care Ultrasound(POCUS:現場で迅速に行うベッドサイド超音波検査)のスキルを競い合う、エコーの知識と技術を高めるための教育的な大会です。チーム対抗戦形式で、実技と臨床知識の両面から評価され、近年注目を集めています。
東邦大学からの参加は今回が初。学生たちは、限られた時間の中で基礎的なプローブ操作から臓器の描出、病態の判断に至るまで真剣に学習を重ねています。
こうした学生の情熱に応えるべく、総合診療科では、POCUS講習履修経験があり、臨床現場でPOCUSをフル活用している柏木先生、森先生、繁田先生をはじめとする医局員が、通常診療・教育業務の合間を縫って指導にあたっています。
総合診療の現場においてPOCUSは欠かせない武器であり、その早期修得は今後の臨床に大きな力となるはずです。学生と医局員がともに学び合い、高め合うこの取り組みは、まさに東邦大学らしい「現場に強い」総合診療の姿勢を体現するものです。
東邦大学エコー研究会と総合診療科の挑戦を応援してくださると幸いです。
文責 佐々木陽典
——————————————————————————————————————————————————————
詳しく見る
2025/07/02
鹿嶋直康先生の学位取得祝いをしました。
先日、昨年まで当医局で助教を務められていた鹿嶋直康先生が、医学博士の学位を取得されたので、知人に紹介してもらった居酒屋でささやかな祝賀会を開催しました。
指導教授だった瓜田純久先生が、はるばる青森から駆けつけてくださり、実験を指導してくださった今井常彦先生、長年ラットの面倒を見てくださり、研究を支えてくださった“スーパー秘書”の佐藤さんもご参加くださり、鹿嶋先生にとって忘れられない夜となりました。
終始なごやかな雰囲気の中で、これまでの苦労話も飛び出しつつ、みんなでお祝いすることができました。
鹿嶋先生、おめでとうございました。今後の更なる活躍を祈念しております!
皆で日本酒を楽しみました!
文責:佐々木 陽典
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
詳しく見る
2025/07/02
6月29日に東邦大学初のJMECC指導者講習会を開催しました。
6月29日(日)に東邦大学で初めてのJMECC(Japanese Medical Emergency Care Course)指導者講習会を開催いたしました。JMECCは、日本内科学会が日本救急医学会と連携して策定した、内科医を対象とした救急対応トレーニングプログラムであり、内科専門医免許を取得するための必須要件です。2015年から藤沢市民病院の病院長である西川正憲先生(当科客員教授)に毎回ディレクターをお勤めいただき、総合診療科の運営により、なんとか年2回の東邦大学JMECCを開催してまいりましたが、開催15回となった現在でも本学出身の指導者が育たず、JMECCインストラクターは私のみであり、常に全国の様々な施設の先生方にご指導に来ていただいているのが現状です。
「自分達の病院の医師は自分達で育てる」ことを目標に、兼ねてから指導者育成に努めてまいりましたが、その努力が身を結び、指導者講習会を受講したいと申し出てくれる受講生が現れ、西川先生のご厚意により、東邦大学で初めての指導者講習会が実現いたしました。
講習会の成功にあたり、ディレクターを務めてくださった当科客員教授の西川正憲先生をはじめ、国際親善総合病院病院長 清水誠 先生、昭和大学藤が丘病院 循環器内科・集中治療科 診療科長・准教授の佐藤督忠先生に、心より感謝申し上げます。また、遠方からもお越しいただき、意欲的に参加してくださった6名の受講生の皆様、そして休日にもかかわらず、円滑な運営に全力を尽くしてくださった医局秘書の小林様にも深く御礼申し上げます。
今回の講習会で東邦大学に新たに4名のインストラクター候補者が誕生しました。東邦JMECCの火を絶やさず、そして、できればより盛んになるように引き続き尽力してまいりたいと思います。
文責:佐々木 陽典
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
詳しく見る