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World Journal of Clinical Casesに単純性虫垂炎と複雑性虫垂炎の臨床的鑑別に関する論文が掲載されました!

以前に急性虫垂炎と右半結腸憩室炎の臨床的鑑別点に関する論文を掲載してもらったWorld Journal of Clinical Casesに、同研究データを利用した単純性虫垂炎と複雑性虫垂炎の臨床的鑑別に関するPost hoc analysis的な論文が掲載されました!

単変量比較では、CT・超音波所見で複雑性虫垂炎(穿孔・膿瘍形成・壊疽性虫垂炎)と診断された症例では年齢中央値(34歳 vs 49歳)、発症—受診間隔(日)、心拍数、体温、血清CRP値が有意に高く、糸球体濾過率(腎機能)、血清Na値が有意に低いという結果でした。

これらの要因を説明変数としたロジスティック回帰では、CRPが唯一有意に高いオッズ比を示し、CRP値が高いほど複雑性虫垂炎に至っている可能性が高くなる、という結果でした。

個人的には

1) 以前に私が臨床研究デザインを初めて勉強させていただいたi-HOPEの福原俊一先生が「コホートは一粒で何度も美味しい」とおっしゃっていたのが印象的で、いつか一つのデータセットを利用して2つ以上の論文を書いてみたいと思っていたので、それが実現できたこと

2) Editorial officeから”We are happy to tell you that this paper will be given priority for publishing, with all publishing fees waived.”とのことで掲載料が全額免除になったこと

が嬉しかったです!(2についてはきっと教授と秘書さんが私より嬉しかったはず…)

https://www.wjgnet.com/2307-8960/full/v8/i11/2127.htm

文責:佐々木 陽典

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鹿嶋先生と執筆した症例報告が掲載されました。

当科医局員の鹿嶋直康先生と共同執筆した症例報告が日本病院総合診療学会の英語版学会雑誌であるJournal of Hospital General Medicineに掲載されました。

この症例報告“Non-perforated hemorrhagic gastric ulcer presenting with left shoulder pain and orthostatic dizziness, but without abdominal pain”は左肩の痛みと起立時のふらつきを主訴に受診し、左肩の痛みを内蔵疾患に由来する関連痛ではないかと考え、起立のふらつきから消化管出血による起立性低血圧を想起し、その組み合わせから出血性胃潰瘍を疑って早期に診断に至った症例です。

内視鏡検査で胃潰瘍が見つかり、その治療だけで肩の痛みが速やかに消失したことから、やはり左肩痛は胃潰瘍の関連痛だったのだろうと考えていますが、これまでに穿孔していない胃潰瘍による左肩痛は報告がなく、痛みが出た機序は不明です。私たちなりに教科書や過去の論文を調べ、穿孔していない胃潰瘍でも左肩痛を来たしうることとその想定されうる機序について提唱した症例報告であり、様々な雑誌で掲載に至らず、掲載までにかなり苦労しましたが、こうして形にすることができて嬉しく思います。

英語が得意とは言えない鹿嶋先生が一から原稿を書き上げて持って来てくれた時のことは今でも印象深く覚えています。鹿嶋先生は快活としていて気遣いができてコミュニケーション能力が高く、直感的にスピーディに仕事をこなすタイプであり、あまり深く物事を考える学究肌ではないと思っていたので、今回、一から推敲しつつ英語で症例報告を書き上げてくれたことは正直驚きでした。

現在は関東労災病院で糖尿病専門医を目指して修行中であり、さらにパワーアップして帰って来てくれることを楽しみにしています。本症例報告に関して学会発表から資料検索・論文執筆までお疲れ様でした!

執筆に際してご助言・ご指導いただいたJR東京総合病院陶山恭博先生、沖縄県立宮古病院本永英治先生、島根大学和足孝之先生、千葉大学鋪野紀好先生、南多摩病院國松淳和先生にも心からお礼申し上げます。

別刷りを片手に満面の笑みですね!

(写真撮影のためだけに関東労災病院から呼び出しました…パワハラ?)

文責:佐々木 陽典

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JUGLERによる症例報告投稿先に関する論文が掲載されました!

JUGLERとは「既存の枠に囚われず、理想の病院総合医の姿を明確にして大学病院総合診療科の必要性を発信する」ことを目的に佐賀大学多胡准教授(発起人)、獨協医科大学志水教授、順天堂大学高橋先生、千葉大学鋪野先生、島根大学和足先生、私がメンバーとして活動しているJapan University General medicine Leadership and Education Roundtable日本大学総合診療リーダーシップ・教育円卓会議の略称のことです。

この度、JUGLERメンバーの経験を症例報告の掲載を志す若手総合診療医と共有する目的で多胡先生が執筆された症例報告を掲載する学術雑誌に関する論文がSpecial contributionとして日本病院総合診療学会の英語版学会雑誌であるJournal of Hospital General Medicineに掲載されました!

多胡先生の呼びかけから候補雑誌の選定、論文完成、掲載まであっという間に進み、改めてJUGLERメンバーの圧倒的なパワーを実感しました。

大学病院総合診療医としてはAcademic hospitalistとして原著論文・研究論文を継続的に発信し、業績として認知してもらうことが重要ですが、一方で、Impact factorや大学内での業績として認められなくても、第一線の臨床医として学びのある症例を症例報告として発信することは総合診療医として大切であり、また、大学・市中を問わず、若手医師と協働する手段としても症例報告は重要だと考えています。

その意味で、今回掲載された論文は症例報告を執筆している若手・中堅医師にとって非常に実践的で参考になり、そしてEncouragingなものだと感じています。

文責:佐々木 陽典

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2月5-6日にJUGLERが東邦大学を訪問してくれました!

2月5日-6日の両日、私が共に活動させていただいている

JUGLER(Japan University General medicine Leadership and Education Roundtable)のメンバーが東邦大学医学部・大森病院を訪問してくださいました。

2月5日は夕方から院内の会議室で病院総合診療専門医プログラムワーキング委員会を行い、18:30からは「JUGLER直伝!若手指導医に学ぶ未来の病院総合診療医像」と題して講演会を開催させていただきました。

トップバッターの多胡先生にはJUGLERを紹介していただき、大学医局での総合診療医育成について大変示唆に富むお話をいただきました。大学病院総合診療科の意義を意識して医局員といかにビジョンを共有するか、そのための密なコミュニケーションに関するお話はとても参考になりました。和足先生の提唱するAcademic Hospitalistに通じる話があり、全体を通して他の演者の先生方の話を俯瞰するような内容をお話いただけました。

フリーランスとなった高橋先生には「高橋先生、仕事やめるってよ」という痺れるタイトルで前回の佐賀以上に胸がスカッとして勇気付けられるような力強いお話をいただきました。アドラー心理学の課題の分離についても触れていただき、「やりたいことをやる」ことの重要性を教えてくださったように思います。

ご参加いただいた亀田総合病院総合内科の竹之内先生からの「いかにネットワークを作るか」というご質問に対する「自分のやりたいことを自分でしっかり表現できること」というご自身の経験を踏まえた明快な答えをシェアしていただきました。

鋪野先生には「なぜエビデンスに基づく診療を実践する医師の多くがエビデンスに基づく教育を実践しないのか?」という問題提起に基づいて根拠に基づく教育についてご講演いただき、”PAAIL”という指導手法についてご紹介いただきました。前回同様Positive-Negative-Positiveというフィードバックの是非に関して聴衆の興味は高く、5 micro skillsについても議論が及びました。

ご参加いただいた亀田総合病院総合内科の竹之内先生からコーチングとPAAILとの違いなどについても鋭いご質問をいただき、大変有益な議論が交わされました。

和足先生には今回もAcademic Hospitalistと診断エラーに関して和足先生ご自身最新の研究や論文を元に熱いメッセージ溢れる講演をいただきました。ほとばしるPassionと冷徹に分析された判例データに基づく分析の組み合わせによりもたらされる説得力のあるご講演はまさに臨床医の理想”Hot heart. Cool head.”を体現される和足先生ならではだと感じました。

当科の前田先生からも診断エラーに関して質問があり、議論が盛り上がりました。

ちなみに前回の佐賀でご発表いただいた内容、今回の発表の際にはすでに論文として発表されており、改めて和足先生の怪物ぶりを実感致しました。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jgf2.299

今回も大トリを志水先生に飾っていただきました。診断戦略に関して15分という短い時間に濃縮した他では聞くことができない貴重なお話をいただきました。Courtesy (礼節)のお話を襟を正す思いで拝聴し、志水先生の素晴らしい人間性を肌で感じる思いでした。History clarifyingや触診時の「透視力」については(実践レベルは全く違いますが)私も以前から意識して指導していたことであり、まさに「我が意を得たり」という感じでした。志水先生のHistory & Physicalの水準の高さとそのストイックな姿勢に触れ、明日からの自らの患者さんとの向き合い方を見直すきっかけになりました。

どの先生のお話も本当に素晴らしく、講演の間中、司会の仕事を忘れて、笑ったり、唸ったり、驚いたりと、忙しく拝聴しました(笑)。

遅い時間からの開催にもかかわらず、千葉や埼玉など遠方から院外のみなさまが参加してくださり、本当に嬉しかったです。

MediGateというメディアにも取材に来ていただき、記事を掲載していただきました。

未来に羽ばたく学生さん達が参加してくれ、彼らが目を輝かせて夜遅くまで全ての話を熱心に聞いてくれたことが何よりも嬉しかったです。

瓜田院長にも駆けつけていただき、写真まで撮っていただきました!

講演会後は瓜田先生の計らいでJUGLERメンバーに研修医を交えて高輪の懐石料理店で美味しいお酒を堪能しながら親交を深めることができました。

2月6日は冷え込みの強い朝から集合していただき、大森病院、総合診療科、大学を見学していただきました。今の東邦のシステムの中で何が改善できるか、何をすべきか等、それぞれの先生方のやり方や工夫を具体的に伺うことができました。EBMの実践を如何に学生に指導しているか、学生の評価方法、論文執筆指導のための具体的な工夫やそれぞれの先生方のご苦労等を伺うことができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。

JUGLERメンバーの皆様、ご参加くださった皆様、両日にわたってお付き合いくださった瓜田院長、いろいろとサポートしてくださった秘書の佐藤さん、小林さん、誠にありがとうございました。

文責:佐々木 陽典

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小松先生と執筆した症例報告が掲載されました。

大学院生の小松史哉先生と共同執筆した症例報告が日本病院総合診療学会の英語版学会雑誌であるJournal of Hospital General Medicineに掲載されました。

この症例報告“Ovarian vein thrombophlebitis: a potentially fatal differential of pyelonephritis”は当初は急性腎盂腎炎と診断されかけた産褥期右卵巣静脈血栓性静脈炎の症例について報告したものです。卵巣静脈血栓性静脈炎は肺塞栓を合併して致命的な転機をとる可能性もある疾患です。ほとんどが産褥期に右側に発症するため、患者が産褥婦であることを念頭におけば診断は難しくないのですが、稀な疾患であるため産婦人科医にも認識されていないことも多く、急性虫垂炎や尿路感染症と誤診されることが少なくないようです。

急性腹症の診断は時に非常に困難ですが、やはり婦人科歴を含めた詳細な問診が診断において極めて重要であることを再認識させられた教育的な症例として報告させていただきました。

小松先生は臨床からフラクタル等の先進的な研究までを一手に行う当科の若手のエースです。本症例報告に関して学会発表から資料検索・論文執筆までお疲れ様でした!

別刷りを片手に満面の笑みですね!

(やらされている感じが出てますが、苦笑ではないと信じます。)

文責:佐々木 陽典

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