UGLERメンバーで佐賀に講演会+見学ツアーに行って参りました(1)
JUGLERとはJapan University General medicine Leadership and Education Roundtable日本大学総合診療リーダーシップ・教育円卓会議の略称のことです。2018年10月に「学会・専門医制度等の既存の枠に囚われず、自分たちの理想の病院総合医」の姿を明確にして、大学病院総合診療科の必要性を発信する」ことを目的に結成された大学病院総合診療科の若手リーダー達の集まりです。
メンバーは発起人の佐賀大学の多胡講師、獨協医科大学志水教授、順天堂大学高橋先生、千葉大学鋪野先生、島根大学和足先生、私(佐々木)からなり、5月の第10回日本プライマリ・ケア連合学会、9月の第19回日本病院総合診療医学会で病院総合医のコア・モジュールを提唱してきました。
(左から和足先生、鋪野先生、志水先生、多胡先生、私、高橋先生です。)
今回は相互理解と交流を深める為の試みとして、発起人である多胡先生に講演会と見学にご招待いただきました。
10月31日の夜に開かれた講演会では学生さんや研修医の先生を含めて若手からベテランの先生方まで大変多くの皆様にご参加いただきました。
私も学生の講義や学会発表等、かなりの場数を踏んできており、プレゼンテーションにはある程度自身がありますが、今回の講演会は、超一流のプレゼンターでもある先生方と共に登壇するということで、これまでで一番プレッシャーを感じました。ドキドキしながらの低ナトリウム血症に関する講演でしたが、「わかりやすかった」との感想をいただけて安心しました。
(緊張の面持ちの佐々木です)
「人生の目標は何か?」という問いかけから始まり、「キャリアプランを示してほしい」という願いは「安心させてほしい」という願いに過ぎず、「自分の未来に期待して、自分の将来に責任を持て」と喝破する高橋先生のお話は本当に心に響きました!
(TED顔負けのプレゼンをしてくださった高橋先生)
「日頃、根拠に基づいた医療を実践しているはずの医者が、根拠に基づいた教育を実践していない!」という現状への問題提起から始まった鋪野先生の講演では、金科玉条のように行われている「褒めて、叱って、褒める」というサンドイッチ・フィードバックが有効な教育法とは言えないこと等、留学されたマサチューセッツ総合病院医療者教育修士過程での経験を活かして、最新の知見に基づいてお話いただき、目から鱗でした。
(丁寧でわかりやすいレクチャーをしてくださった鋪野先生)
診断エラーに関する和足先生のお話では、ご自身の最新の研究結果をシェアしていただきました。判例を用いた診断エラーに関連した医療訴訟の危険性の高い初期診断名として「上気道炎」、「非出血性」、「異常なし」が示されているとの結果であり、まさに私達が後輩に対して、安易に「風邪」、「胃腸炎」、「便秘」
とゴミ箱診断したり、病歴(突然発症・増悪傾向等)を軽視して、初期検査で異常がなければ「異常なし」と判断してはならないと指導していることの妥当性を客観的に示した素晴らしいデータでした。そして、何よりも、このような実臨床で患者さんの安全を守るために大切な内容を研究論文として発信できる和足先生の辣腕に改めて感服しました。研究至上主義の大学病院が頂点である日本の医療の現状で、研究・論文という大学における共通の通貨を持つことで、新規参入組である総合診療の重要性を認知してもらう為に研究をリードする総合診療医Academic Hospitalistを育成することの重要性を痛感しました。
(情熱ほとばしるレクチャーをしてくださった和足先生)
診断戦略を総合診療領域の中核的な研究領域と位置付けてこの領域を牽引されている志水先生からはJUGLERの提唱するコア・モジュールを紹介していただいたうえで、診断戦略と生涯教育について、最新の診断戦略や教育における3つのReflectionとAbductionなどをご紹介いただき、講演会をまとめていただきました。
(この表情から察するに教育について「魁!男塾」のエピソードをお話されている時の志水先生では?)
(私の話はさておき)どの先生のご講演もそれだけで90分聴きたくなるような、他では絶対に聴けない貴重な内容でした。このような贅沢な講演会を実現してくださった多胡先生の行動力に脱帽です。
(これ以上ない素晴らしい講演会を実現してくださった多胡先生)
さらに講演会の後には、多胡先生のご厚意でお城のような素晴らしいレストランで楽しい時間を過ごさせていただき、JUGLERメンバーの熱い議論は夜中まで続きました。
講演会後のレストランで
私はプレッシャーから解放されて表情筋が弛緩しまくっています(笑)。
講演を企画してくださった多胡先生、医局秘書の林田さん、ご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。
文責:佐々木 陽典
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第11回日本安定同位体・生体ガス医学応用学会を大森病院で開催しました。
10月25日(金)26日(土)に第11回日本安定同位体・生体ガス医学応用学会を大森病院臨床講堂で開催ました。
本学会は1985年に設立された13C研究会と呼気病態生化学研究会が合流して発足し、11年目を迎えた学会です。34年の歴史があり、非侵襲的な医療の確立を目指して、多くの先生が参加してくれております。会員数170名のコンパクトな学会ですが、それだけにこの学会以外では遭遇することがないようなコアな発表が多く、活発な討論が行われます。
今回は弘前大学医学部附属病院 内分泌内科・糖尿病代謝内科 講師の柳町幸先生が会長を務めてくださいました。弘前大学のスタッフが大勢大森病院に参集し、円滑な進行でした。
安定同位体の報告は年々増えて行きますが、13Cの論文は伸び悩んでいます。東邦大学総合診療科は毎年13C関連論文を発表したしていますが、さらにアクセルを踏み込みたいと思います。
次回会長の松山大学薬学部 明楽一巳教授が特別講演をされ、薬物合成とその応用について、熱くお話しました。
活発な議論は懇親会へと続きました。
中村光男理事長からも、大変有意義な学会であったと、労いのお言葉をいただきました。
スタッフの皆さん、本当にご苦労様でした。前日の役員懇親会では、弘前大学の学生さんが貴重な日本酒を実家の酒蔵から提供していただきました。とても美味しくいただきました。ありがとうございます。
前回、大会長である横浜市大教授の稲森先生も、最後までご参加いただき、ありがとうございました。医学教育など、多くの意見交換ができました。
二次会は梅屋敷の食彩工房さんです。急な大勢で押しかけたのでに、美味しい料理をたくさん出してくれました。ありがとうございます。
会長の柳町先生は、重責から解放され、ホッとした表情です。本当にお疲れ様でした。素晴らしい学会をありがとうございました。
次回は愛媛県松山市で開催されます。また、みんなで参加して、勉強したいと思います。
事務局の佐藤さん、ありがとうございました。
文責 瓜田純久
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10月18日(金)佐々木先生がNHK Eテレ「チョイス@病気になったとき」に出演しました。
佐々木陽典先生がNHK Eテレ「チョイス@病気になったとき」に出演し、血尿についてお話しました。
尿管結石、膀胱癌、IgA腎症など、患者さんと泌尿器科 中島耕一教授のご協力をいただいて、とても解りやすい構成となっていました。
顕微鏡的血尿は医師国家試験にもよく出ます。肉眼的血尿は一旦よくなっても、必ず病院で検査を受けることが重要であると、強調していました。特に、膀胱癌の場合には、肉眼的血尿だけで来院する場合があり、注意が必要です。
すっかりNHKの常連となった佐々木先生ですが、今回はアクシデントがありました。当初は10月12日(土)の放送予定でしたが、台風15号の影響で延期となり、何と再放送が先に放送されました。10月12日(土)予定の番組は11月16日(土)20:00からオンエアされます。ご協力いただいた泌尿器科 中島教授も手術について丁寧に解説してくれています。ご指導ありがとうございました。
またご協力いただいた患者さんにも、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
文責 瓜田純久
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10月19日(土)第31回日本超音波医学会 関東地方会で、小松史哉先生が「フラクタル次元を用いた甲状腺超音波像の検討」を発表しました。
10月19日(土)東京ビックサイトで開催された第31回日本超音波医学会 関東地方会で、小松史哉先生が「フラクタル次元を用いた甲状腺超音波像の検討」を発表しました。
1992年からはじまった伝統ある日本超音波医学会 関東地方会は、会員数が5100名を数え、全国規模と同等以上の学会です。今回は大橋病院放射線科の関口隆三先生が会長を務め、多くの先生がビックサイトに集結しました。私は青森で開業していましたが、超音波学会への思いが強く、第1回から参加させていただいております。
放射線科の関口先生はラグビー部の先輩であり、がんセンターで多くの業績をあげて本学に戻ってくれました。先輩の開催する学会に、何とか演題を出したいと考えていましたが、小松先生が学位論文を少し発展させて発表してくれました。
今回は一般演題であり、フラクタルの原理を聴衆に理解していただくには、短すぎました。小松先生も苦心のスライド作りでした。
それでも自治医大の先生から質問があり、小松先生は理路整然と答えていました。
超音波検査はとても魅力的なツールです。ではどれだけの大きさに反応して画像を結ぶのか、意外に理解されていません。高校生の時に学習した物理では、音速=周波数×波長 であることを思い出すことができます。この波長よりも大きいものに反応して、音源に音波が戻ってきます。音速は一定ですので、周波数を上げると波長が小さくなり、より小さなものを描出できることがわかります。
フラクタル次元は物差しが指数関数のため、掛け算を足し算に変換する対数グラフにすると、その次元は線形の直線で示すことができます。そのため、周波数、焦点深度、ゲイン、関心領域とプローブの距離に影響を受けることなく、次元を求めることができるため、使用した機種による違いは理論的にほとんど影響しないことになります。モニターの解像度も影響はありません。
フィードバック機構が生命維持の中心である生体では、多くの現象が周期的に出現し、初期値の変化によって思いがけない変化であるカオスを呈することもあります。周期的現象はフーリエの定理によって、シンプルな波形に集約され、周期関数はオイラーの公式によって、指数関数に変換されます。自己相似性を有する生体の物理的特徴を明らかにするフラクタル解析は、極めてシンプルであるがゆえに、生体の本質を浮き彫りにしてくれる手法です。総合診療における臨床推論にとって、極めて重要な思考回路であり、研究テーマは尽きない領域です。小松先生、本当にご苦労様でした。学位審査も頑張りましょう!
文責 瓜田純久
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総合診療科助教 貴島祥先生が臨床医学7の講義で「がん難民」について4年生に講義をしました。
ラグビーW杯で日本が感動的な試合を続け、日本中が3連勝に湧いています。ラグビーとまったく関係ありませんが、10月7日(月)9:00から、貴島祥先生が臨床医学7の講義で「がん難民」について4年生に講義をしました。
がん診療は、がん拠点病院が整備され、集約化される傾向が強まっています。しかし、がん専門病院は標準的治療を提供しますが、合併症や基礎疾患への対応には比較的淡白となっているのが現状です。また、専門病院での治療を希望する患者さんだけではなく、高齢化に伴って居住する地域で次善の治療を希望される患者さんも増えています。標準的治療が終わった方は、治ろうが治らなかろうが、基礎疾患を診療している後方病院で経過をみることが多く、がんの治療効果が得られない場合には、患者さんは行き場を失ってしまいます。
貴島先生は癌研有明病院で後期研修を行い、東邦大学 総合診療科に入局してくれました。数多くの標準的治療を行った経験と、総合診療において標準治療終了後に行き場を失った患者さん、また原発不明癌のように治療を担当する診療科が決まらない患者さんを積極的に診療してくれました。
系統講義では、標準的な診断と治療は学修できますが、基礎疾患や認知症、家族の理解が得られず治療が不十分となる場合があり、これは系統講義では学ぶことはできません。
そのような講義ができるのは、本学では貴島先生だけです。学生さんも熱心に聴き入っていました。貴島先生の講義は、学生さんの心に響いたはずです。
貴島先生、素晴らしい講義をありがとうございました。11月のフラクタル講義もよろしくお願いします。
文責 瓜田純久
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