EVENT 説明会・イベント

レジデント竹下智史先生が研修報告を行いました。

東京山手メディカルセンターで活躍しているレジデントの竹下智史先生が10月2日(土)医局で研修報告を行いました。

 糖尿病をサブスペシャリティーとする総合診療医を目指している竹下先生は、内科専攻プログラムで、大森赤十字病院の糖尿病内科でトレーニングをはじめました。師匠の北里先生は、合併症の多い糖尿病患者さんを診るためには、内科医としてのトレーニングが最優先と話しておられ、竹下先生も多くの患者さんの診療をさせていただきました。

その後、北里先生の勧めで東京山手メディカルセンター糖尿病内科へ移動し、さらに内分泌疾患などへの理解を深めて行きました。新型コロナ感染症が拡大する中で、感染症診療に多くのエフォートが求められましたが、指導医の先生方のご配慮で、専門分野の研修も着実に進めていただきました。誠にありがとうございます。

 竹下先生は1年後に大学に戻る予定です。大きくなって戻ってきてくれることを期待しています。東京山手メディカルセンターのスタッフの方々に、この場を借りてお礼申し上げます。

                  文責 瓜田純久

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医学部ニュースに科学研究補助金採択に関する記事を掲載させていただきました。

本学の医学部ニュース165号に科学研究補助金(通称科研費)採択に関する記事を掲載させていただきました。憧れつつも自分とは縁遠いと考えていた科研費の採択者一覧の最後に自分の名前を見つけた時の喜びは今でも忘れられません。

ご一読いただけると幸いです。

URL: https://www.toho-u.ac.jp/med/mednews/index.html

研究課題「前立腺癌バイオマーカーとしての呼気中アルデヒド類の有用性の検討」は、将来、採血をせずに吐き出した息を調べることで前立腺癌検診ができないかという夢のある研究であり、現在、おかげさまで順調に進行しております。

励ましてくださり、ご援助いただいた皆様に感謝申し上げます。

また、励まして続けてくださり、掲載の機会も与えてくださった狩野先生にも感謝申し上げます。

こちらにも転載させていただきます。

科学研究費補助金採択を受けて

総合診療・救急医学講座(大森)

佐々木 陽典

お金をかけずにできる研究として診療記録を用いた疫学研究に勤しんできた私にとって、科学研究費補助金(科研費)の獲得は夢であると同時に、自分には縁遠いものだと思っておりました。それだけに、三度目の正直で、採択者一覧の最後に私の名前を見つけた時の喜びは今でも忘れられません。

採択に至ったのはURAの武藤先生の指導のおかげと感謝しております。述べ3時間以上にわたる対面指導に加えて、数十回メールをやり取りして、親身にご指導いただきました。「この文章は何を言っているのか理解できない。」と厳しいご指摘をいただき、自らの未熟さを痛感させられる一方で、研究の意義をご理解いただき、「どの細目で申請するのがよいか」まで一緒に考えていただいたことで「どうせ無理だ」と諦めてしまいそうな科研費申請を「実現可能な目標」として捉え続けられたように思います。

採択によって研究が前進し、頻繁に実験室に出入りするようになったことで、研究の楽しさを実感できるようになり、また、これまで縁のなかった方々と繋がりが持てるようになりました。統計ソフトとにらめっこするだけだった私の前に広がった新しい世界にワクワクしながら日々を過ごしております。

若手の先生方は是非URAを活用して物怖じせずに挑んでいただければと思います。ご指導に加え、励まし続けて下さった武藤先生、瓜田教授、狩野教授をはじめご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。

文責:佐々木 陽典

白黒の写真に文字の書かれた紙

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選択講義「臨床医学に役立つ複雑系科学入門」の講義を終了しました。

9月8日に選択講義「臨床医学に役立つ複雑系科学入門」最終回を終えました。最後の講義に参加してくれた27名の学生の皆さん。ありがとうございました!

 東邦大学でなければ聴けない講義を実施したいと、青森から大学に帰ってきた2005年から、ずっと考えていました。しかし、古典的な系統講義は臓器別の設定になっており、一方教養講義は大きく縮小されていました。2019年に医学部1−3年生を対象とする選択講義枠の担当が埋まらないと教授会でアナウンスがあり、憤然として手あげしました。

 今年は15コマの予定でした。当初40名の学生さんが選択してくれました。

第1回はなぜ複雑系科学が臨床に必要なのかを考えて見ました。

第2回はネットワーク論です。スモールワールドネットワークの意義について、みんなで考え、実際の治療への応用例を見ていただきました。

第3回はグラフ理論です。頂点次数によって、ネットワークに入れない頂点があること、一筆書きできるオイラー回路は密な連携をもつクラスター。ネットワークの脆弱性はベッチ数、最短距離と最適ルートは必ずしも一致しないことを確認しました。

第4回はグラフ理論の応用です。ニューロンネットワークの特性について考え、

リンパ節郭清しても再発する理由をグラフ理論から説明して見ました。

第5回はネットワークを流れる血流と血管分岐形態について考えて見ました。Hagen-Poiseuilleの法則から、なぜ心筋梗塞が多いのか、ネットワークを流れる最大流量についても考えてみました。

第6回はゲーム理論です。感染症拡大への対策、集団が安定する相互作用、少数派にも役割があること、生体には周期的変化が多いことを確認しました。また、集団を変えるには5%の人間が変わればよいことも計算してみました。

第7回はロジスティック写像です。漸化式で次の状態を予測し、フーリエの定理、オイラーの公式を用いて周期的変化を示す疾患の症候を指数関数で表現できることを示しました。その固有値によって全ての疾患の重症度を比較してみました。

第8回はフラクタル解析です。複雑系科学で医学博士を取得した助教の小松先生が担当してくれました。

第9回はカオス、局所安定性の時間です。ロジスティック写像を3時関数へ発展させて考え、密度効果を考えてみました。初期濃度の違いは指数関数的に増幅されますが,非線形効果が現れてくるとアトラクターに収束する場合、不規則な時間変化を示すカオスになる場合があることを確認しました。

第10回はセルオートマトンです。初期値から将来を予想する微分方程式が求められない変換では、セルオートマトンを用いると将来をシミュレーションできることを示しました。そして、逆流性食道炎、網膜剥離、MRSA感染拡大などについて、モデルを動かしてみました。

第11回は拡散律速凝集モデルです。拡散速度が個体や病変の形を決定する。ランダムウオークが再現性のある複雑な形態を作る。単純な局所作用だけで形態は決定していることなど、確かめてみました。シマウマの縞模様のできる機序、ポリープの形態を決定する一因となることを示しました。

第12回は自己組織化です。臓器形成における細胞の量的効果、誘導物質アクチビン濃度による誘導臓器の変化、細胞間相互作用について学習しました。経過観察で治る場合と後遺症が残る場合について、アトラクターの概念を用いて考えて見ました。

第13回はイオン化傾向です。イオンチャネルの大きさと分子の大きさのギャップが生じる理由を考え、イオンが周囲の水運動エネルギーに及ぼす影響から、電解質異常で見られる症状を考えてみました。

第14回は第117回日本内科学会総会「医学生・研修医による日本内科学会ことはじめ」において、優秀演題賞を受賞した医学部6年生の林優作君が「セルオートマトンを用いた数理解析による院内感染伝搬様式の検討」について、講義してくれました。当初はMRSA感染伝搬様式を解析するモデルでしたが、今回はCOVID-19感染モデルも作成しました。また、大きく制限された環境での臨床実習においても、思考回路を柔軟に作動させると、通常の実習以上に得るものがあることを結論に入れてくれました。

第15回は複雑系科学と倫理についてお話しました。高等教育の大衆化と高度化の矛盾、非線形な反応の多い生体では固有解ではなく、周期解が多いことから、リベラルアーツ教育の重要性が高いことを強調しました。医学教育も専門学校化しており、教育産業の産生物としての医師を量産している現状を考えてみました。

日本では産業革命の果実は軍需産業として速やかに受け入れられ、「明日役立つ学問」が推奨され、国立大学では教養学部が廃止され、現在の産学連携、イノベーションに繋がります。元来,医療人には道徳的信念や期待に反するような行為を強いられる状況への対応,診療の不確実性や告知など、医療者固有の葛藤や苦悩があり,これらがコロナ禍において増大し,修復困難な局面に何度も遭遇することが少なくありません。医療はケア労働、感情労働とも言われ、機械化できない労働集約型産業に分類されていました。対象を増やして生産性向上できず、また対象者が効率化を希望していないからです。生産性を高めるために無理な効率化が断行されると、医療者のmoral injuryは増悪してしまいます。医療の問題点を学生さんと共有させていただき、有意義な時間を過ごすことができました。

 誠にありがとうございました。

 参加してくれた学生さん、今度は臨床実習で待ってます。ともに最適解を探しましょう!

                文責 瓜田純久

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「人新世の便秘診療」の講演をさせていただきました。

2021年9月21日(祝)に第75回日本食道学会学術集会 ランチョンセミナーで講演させていただきました。司会を担当していただいたのは、尊敬する川崎医科大学の春間教授でした。開始まで、コロナ感染や研究、そして同じフィールドの人事など情報交換をさせていただき、貴重な時間となりました。

本学会は日本医科大学消化器内科 岩切勝彦教授が会長を務め、緊急事態宣言下でハイブリッド開催となりました。

 飽食の時代となってまだ70年程度の日本ですが、「食べられるのに食べない」食生活の偏りが広がっています。脱成長が難しいように、食習慣を変えるにはとても苦労します。病態を資本論に習いまとめて見ました。

 紀元前5千年の地球の人口は500万人、一人当たりの国民総生産は1990年ドル価格に換算すると400-500ドルでした。関ヶ原合戦のあった1600年の人口は5億人と100倍になっていますが、一人当たりの国民総生産はやはり400-500ドルであったとされます。産業革命を経て2000年には6,000ドルと急上昇しています。第二次世界大戦後の高度経済成長を経て、日本では飢えない時代にようやく到達します。しかし、食生活は大きく変わって行きました。「食べなければ出ない」「食べられるありがたさ」によって、脱成長と脱便秘を目指す内容になりました。

祝日に参加いただいた会員の先生方、ありがとうございました。

                                                                             文責 瓜田純久

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9/18-19に第23回日本病院総合診療学会が開催されました。

9/18-19に第23回日本病院総合診療学会がWeb開催されました。

初日9/18の9:00-10:00まで私は特別企画2 「症例検討から学ぶ診断推論戦略 by JUGLER (Vol.2)」にディスカッサントとして参加させていただきました。1例目は埼玉医科大学総合診療内科の熊川友子先生のご指導のもと、水戸協同病院総合診療科の青山彩香先生が、不明熱として受診したサルコイドーシスの症例について大変詳細にプレゼンテーションしてくださいました。臀部痛という愁訴を病変を示唆する局所症状と捉えるのか非特異的全身症状として捉えるべきか、Review of systemsの陽性所見をどのように有意と判断するのか等、とても勉強になる症例でした。

2例目は東京ベイ・浦安市川医療センター総合内科の松尾裕一郎先生のご指導のもと同院の増田洋平先生が乳癌術後フォローアップ中の患者に生じた転倒後発祥の進行性の高次機能障害・意識障害・嘔吐の症例を提示してくださいました。嘔吐という症状やバイタルサインから第4脳室周囲病変の存在や頭蓋内圧上昇を見抜く志水先生の鋭い診断に感嘆いたしました。「癌の既往のある患者では、常に癌に関連した病態を念頭におくべし!」という、大変シンプルかつ重要なメッセージのある素晴らしい症例提示でした。毎度のことながら志水太郎先生の系統的で鋭い思考プロセスの明快な解説と鑑別診断の広さ、鋪野先生の的確なまとめに感嘆しながら、楽しく過ごしました。

男性の写真のコラージュ

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ダイアグラム

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同じ頃、研修医の阿部雄一先生は学会デビューながら見事に「亜急性の痺れ・脱力を主訴に来院した高齢発症の関節リウマチの一例」を発表してくれました。見守っていた西江先生も見事な出来栄えに満足したのではないかと思います。

テーブル

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瓜田教授はランチョンセミナー1「便秘診療-病態評価から治療まで-」の座長を務められ、プライマリケア医の立場から病態の理解をどのように治療に繋げるのか等について演者の木下芳一先生にご質問され、聴衆の理解をより深めてくださいました。最後にコメントされた「健常人の直腸にはガスは貯まらない。」というのは私自身にとってもシンプルかつ重要な学びとなりました。

スーツを着ている男はスマイルしている

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午後は私自身も副代表を務めさせていただいている若手部会執行部の近藤猛先生(代表)、副代表山下先生(副代表)、宮上先生(診断エラー部門リーダー)と特別企画3 「Beginnerのための学会発表から症例報告執筆につなげるTips」というテーマで学会発表を症例報告にするまでのポイントや経験について発表致しました。気の合う仲間と大好きな症例報告について話すということで、打ち合わせの段階から盛り上がりまくり、本番では、HITO病院五十野先生からの「症例報告にしてみたら?という背中を押してくれる指導医が重要」といった素晴らしいチャットコメント等もいただき、とても熱い議論ができました。私は「残念ながら患者さんが亡くなってしまった症例について、お宅に伺って、ご焼香させていただき、ご遺族から同意書に署名をいただいて、思い出話を伺って帰ってきた」というエピソードも紹介させていただきました。症例報告執筆を志す若手医師に私たちの症例報告にかける情熱が少しでも伝われば幸いです。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, Web サイト

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その後はシンポジウム3 「総合診療医のための研究メンタリング・コーチングスキル by JUGLER」にシンポジストとして参加させていただきました。私は後輩の指導については力不足で失敗ばかりなので、このセッションでの鋪野先生によるメンタリング・コーチングに関する解説や他の先生方の指導のコツ等、聞いていて、とても勉強になりました。

テキスト, 手紙

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テキスト, 手紙

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2日目となる9/19は宮崎先生が一般演題18「感染症2」 で座長を務められ、聴衆にとっても勉強になる質問やコメントを随所でお話してくださり、とても勉強になりました。

スーツを着ている人はスマイルしている

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私は自分自身の失敗談として一般演題29で「アルコール性肝障害があり診断に難渋した寒冷凝集素症の一例」について発表させていただきました。採血手技や検査過程による溶血をどう考えるかや低補体血症について千葉大学の上原先生からも貴重なご質問いただき、座長の原田先生からもありがたいコメントをいただき、貴重な経験となりました。

テキスト, 手紙

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研修医の伊藤敬先生は私と一緒に経験した症例について自分自身で勉強して「ビタミンD欠乏症による低Ca血症をきたした子宮頸癌患者の一例」を堂々と発表してくれました。私自身もとても勉強になった症例でした。伊藤先生、学会デビューおめでとう!

座長をお務めいただいた新村先生の「栄養障害はちゃんと気づいて治療すれば治る病態である。」という締めのコメントが印象的でした。

テキスト, ホワイトボード

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メガネをかけた男性

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今年度、沖縄から入局してくれた西江先生は一流のClinician educatorらしい視点とわかりやすいプレゼンで一般演題23で「非特異的な初期症状を呈し、意識障害をきたしてから診断に至ったListeria monocytogenes髄膜炎の一例」を発表してくれました。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, テキスト, Web サイト

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私も40歳を過ぎ、今回の学会を最後に日本病院診療学会の若手部会執行部を引退することになります。副代表の立場にありながら、体調不良で十分に貢献できなかったにもかかわらず、次期代表の山下先生には「先生は『いいところ取り』でいいんですよ。」と、現代表の近藤先生からは「無理しないで、いてくれるだけで十分ですよ。」と優しく声をかけていただき、本当にありがたかったです。

医局の先生方にも、私のわがままを許していただき、支えていただき、おかげさまで初期メンバーとして4年間活動してきた若手部会として最後になる学会に元気に参加させていただくことができました。

感謝申し上げます。

瓜田先生、皆の写真をたくさん撮ってくださり、ありがとうございます。

文責:佐々木 陽典

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