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4月2日に「教えて!チョイスドクター 患者力アップ講座」が再放送されます。

NHKのディレクターからきたる4月2日に、昨年3月27日に放送された「教えて!チョイスドクター 患者力アップ講座」が再放送されるとのご連絡をいただきました。

この番組は「患者力」という視点から

  • 病院はどうやって選ぶ?
  • 医師とうまく話すには?
  • 医療情報はどうやって探す?

という3つのテーマで番組が構成されたもので、私は「病院はどうやって選ぶ?」の部分で、「総合診療科」について紹介していただき、臓器別専門科で診断がつかず、患者さんが総合診療科を自ら選択して受診してくださり、結果として診断に至った症例の紹介を通じて、

  • 医学の進歩に伴い知識量が増え、専門家がすべての領域をカバーすることができなくなってきた現状を踏まえ、総合診療医がより幅広い可能性を考えて診断を行い、専門医と協力して治療に関わったり、患者さんと専門医の橋渡しを担うようになってきている
  • 総合診療医の役割は働く場所やニーズによって様々であり、難しい病気の診断だけでなく、ありふれた病気の診療や、患者さんを体・病気だけでなく、心理的・社会的背景や家族の問題、介護まで含めて、幅広く人間として診療する役割を担っている(未熟な私にはできていないことばかりですが…)
  • 「症状の原因がわからない時」、「どの診療科を受診したらいいかわからない時」等には総合診療科の受診を考えてほしい
  • かかりつけ医の先生も総合診療科医としての役割を担っており、専門医と協働しているので、活用していただきたい

といったお話をさせていただきました。

スタジオで、東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野准教授の奥原剛先生から「社会的証明の効果」、「進化的最適環境」等、進化心理学、社会心理学、行動経済学等に基づく情報との付き合い方等について、とても興味深いお話を伺えたことは今でも貴重な財産です。

皆様、ぜひご覧ください!

https://www.nhk.jp/p/kenko-choice/ts/7JKJ2P6JVQ/

文責:佐々木 陽典

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ラットを用いたプロピオン酸呼気試験に関する実験を行いました。

プロピンオン酸呼気試験によるビタミンB12欠乏症の診断はこの数年の私の主な研究テーマの一つです。患者さんにご協力いただいている臨床研究と並行して、ラットを用いた研究も行いたいと思い、今井先生、瓜田先生、佐藤さんのご指導・ご協力をいただき、2月23日(天皇誕生日)に実験を行いました。

当日は祝日にもかかわらず早朝から皆さんにお越しいただき、大橋病院の当直明けの河越先生も駆けつけてくれました。今井先生の達人技と他のメンバー全員での連携プレーで16匹分の検体を採取することができました。

日頃は疫学研究ばかりしている私が動物実験をするとはつい最近まで夢にも思わなかったのですが、遠心分離機を回したり、マイクロピペットで血清を分注するのはとても楽しく、実験をしている最中には、小学校の頃の遠足や大学でのダイビング旅行を思い出しました(笑)。

すでに結果を解析中であり、予想以上に期待できる結果が出ておりますので、早速、追加実験の準備を進めております。素晴らしい結果を発表できる日をワクワクしながら夢見ております。

熟練の達人技を披露する今井先生とそれを絶妙なコンビネーションで介助する河越先生。

河越先生の真剣な眼差しが印象的です。

慣れない手つきでマイクロピペットを操作している私の後ろ姿です。

認めたくはありませんが、熊のプーさんを彷彿とさせます。

文責:佐々木 陽典

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第24回日本病院総合診療医学会に参加致しました。

すっかり報告が遅くなってしまいましたが、2月26日-27日にWeb開催された第24回日本病院総合診療医学会に参加致しました。

今回もJUGLERのメンバーでの発表の機会を多くいただき、一般演題も3演題発表させていただきました。また、今回は西江先生、斎藤先生、繁田先生も素晴らしい発表してくれました。

初日はご好評いただいている(そして何より私たち自身が一番楽しんでいる)JUGLERセッション「症例検討から学ぶ診断推論戦略 by JUGLER(Vol. 3)」 にディスカッサントとして参加させていただきました。

埼玉医科大学病院の水流佐方里先生、 熊川友子先生に大変勉強になる多発性骨髄腫の一例をご発表いただき、東京ベイ・浦安市川医療センター小平翔太先生、増田陽平先生に病歴聴取の重要性を再認識させる遺伝性血管浮腫の一例をご発表いただきました。いつもながら志水先生の神コメントを数多く伺うことができ、とても勉強になりました。今後の自分のコメントがどうあるべきかについても考えるきっかけになりました。

志水太郎先生の印象的なクリニカル・パール(一部):

  • 中点の法則:複数の部位に疼痛を訴える場合は中点の病変を考えよ。
  • 突然発症では50歳以上であってもオッカムの剃刀(一元的思考)を適応した方がよい。
  • 50歳以上の患者の消化器症状は「挨拶代わり」と考えよ。非特異的な症状であり、消化器疾患も非消化器疾患のいずれも考えられるLow yieldな病歴と考えよ。

(これは、まさに私がなんとなく感じていたけど言語化できていなかったことであり、これを聞いた多くの臨床医が「これだ!」と膝を打ったと思います。ベスト・パールです!!)

  • 高齢者の多発外傷では家庭内暴力を考えよ。
  • 区域性の痛みではPinch testをせよ。
  • 短期間で跡形もなく改善する病歴では血管系疾患とアレルギー疾患を考えよ。

順調は進行は毎回鋪野先生の名司会(誘導)と多胡先生の完璧なタイムマネージメントの賜物です。お二人の手のひらで転がされている時間がとても心地よかったです。

また、今回は「臨床研究の極意 by JUGLER ―つまずきポイントから解決法を探る―」として若手が研究を実践するうえでの障壁をどうクリアしてゆくかについて話し合いました。他のJUGLERメンバーが研究の実践のために日々どのような努力を重ねているのかを詳細に知ることができて、とても刺激になりました。一人でも多くの若手の背中を押すことができたとすれば幸甚です。

一般演題では、「胃癌術前検査の FDG/PET-CTで認められた COVID-19 ワクチン接種後の腋窩リンパ節への反応性集積」、「スギ花粉舌下免疫療法により惹起された好酸球性心外膜炎および食道炎と思われる一例」、「顔面腫脹を呈して心臓周囲まで達した歯科処置による医原性縦隔気腫」の3演題を発表しました。

3演題とも近日中に本学会の英語雑誌に掲載が決定しておりますので、ご興味のある方はぜひ症例報告をご一読ください。

学びのあった症例を、そのままにせず、省察して、発表して、論文/報告として形に残すという一連の過程をすべての演題で実現できたことを非常に嬉しく思っております。

斎藤隆弘先生は多忙な日常診療をこなしつつ、直前の私からの無茶振りに見事に応え「炭酸リチウムによる腎性尿崩症を呈した一例」について発表してくれました。

西江龍太郎先生は「悪心嘔吐を主訴に来院し、進行する認知機能障害、尿失禁が同一の疾患によるものと診断した一例」として、組織学的に証明された神経核内封入体病の一例を発表してくれました。まさに診断医の執念により診断がついたとても稀で多くの臨床医にとって有益な貴重な症例であり、ぜひ症例報告として世界に広く発信してほしいと思います。

大船中央病院に出向中の繁田知之先生も、大船中央病院で経験させていただいた「難治性頭痛の精査で診断に至った再発性多発軟骨炎の一例」を発表してくれました。

今回の学会は、昨年まで私が副代表を務めさせていただいていた若手部会の躍進と溢れ出るエネルギーを実感できる学会でした。Journal clubという新しい試みに加え、非常に実践的な画像論文投稿のための講演は完成度の高さとディスカッサントのハイレベルな議論に感嘆しました。

オンラインでの開催が続いている飲み会企画Meet the expertsも更に進化し、Zoomの機能をフル活用することでリアルな飲み会のような雰囲気が楽しめました。

さっそく次の学会が楽しみになる素晴らしい学会でした!

私の代理としてOSCEに出席してくれた山田篤史先生、私の代わりに大量の呼気検体を測定して下さった佐藤さんをはじめ医局の皆さん、そして様々な発表演題を通じて貴重な勉強の機会を下さった患者さんに感謝申し上げます。

文責:佐々木 陽典

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2021年度看護師による特定行為研修の指導を終えて

チーム医療を推進し、看護師が役割をさらに発揮するため、2015年10⽉より「特定⾏為に係る看護師の研修制度」が創設され、2020年度から東邦大学でも研修が開始されました。

https://www.lab.toho-u.ac.jp/nurs/planning/tokutei/index.html

(来年度の募集は既に締め切られたようです。)

2021年度から私も指導医として関わるようになり、臨床推論、フィジカルアセスメント(診察)、血液ガス分析、心電図、臨床薬理等の講義・演習を担当させていただきました。輸液については3名の受講生に実際の症例を6例ずつ担当してもらい、実際の症例に対する輸液計画を立案してもらって受講生全員で議論しました。先日、今年度の私の指導範囲が終わり、受講生たちは修了試験に向けて準備に追われているようです。

どの看護師さんも、ベテラン看護師として職場から頼られる存在であり、多忙な勤務を続けながら、その合間を縫って大量の講義、レポート、試験をこなしていました。非常に熱心・積極的で、十分な事前学修をしたうえで講義や研修の臨んでくださったので、非常に有意義な講義・議論を行うことができました。

「さらに自分を向上させたい!」、「より患者さんやチームに貢献できる存在になりたい!」という熱意には本当に頭が下がる思いです。それと同時に、卒前教育で浸透してきている参加型授業/実習、問題解決型学修、グループワークを通じて医学生に求められている質の高い教育とは、本来こういったものであり、やはり学修者自身が議論に必要な基本的な知識を身に付けて準備したうえで積極的に参加してこそ成り立つものだと実感しました。優秀な受講生達の姿勢から学んだことを卒前教育にも活かせるようにと考える貴重な機会となりました。

受講生皆さんの合格をお祈りしております!

文責:佐々木 陽典

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2月5日にJPCA佐賀支部第6回学術大会で「症例検討から学ぶ診断推論戦略 by JUGLER」を開催致しました。

本文:

JUGLERとは「既存の枠に囚われず、理想の病院総合医の姿を明確にして大学病院総合診療科の必要性を発信する」ことを目的に佐賀大学多胡准教授(発起人)、獨協医科大学志水教授、順天堂大学高橋先生、千葉大学鋪野先生、島根大学和足先生、私がメンバーとして活動しているJapan University General medicine Leadership and Education Roundtable日本大学総合診療リーダーシップ・教育円卓会議の略称のことです。

JUGLERホームページ: https://jugler-gm.com

これまでも鋪野先生、多胡先生のご尽力により日本病院総合診療学会で「症例検討から学ぶ診断推論戦略 by JUGLER」を開催させていただき、好評をいただいております。

内容は日経メディカルにも掲載されております。:

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/dxbias/202104/569723.html

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202110/572254.html

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/202201/573233.html

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/202201/573234.html

今回は日本プライマリ・ケア連合学会佐賀支部第6回学術大会で開催の機会をいただきました。総合診療の古豪である佐賀大学総合診療部から2症例をご提示いただきました。

1例目は佐賀大学総合診療部の平田理紗先生からご提示いただいた半年前からの血圧低下と1ヶ月前からの盗汗、発熱、体重減少で受診された症例でした。

半年前からの血圧低下と1ヶ月前からの発熱から副腎不全や甲状腺機能低下症等の内分泌疾患といわゆる不明熱を一元的に説明できる病態として、副腎に生じた血管内リンパ腫等の悪性リンパ腫ではないかと考えましたが、診断は下垂体-視床下部に生じた血管内リンパ腫でした。副腎皮質機能低下の原因は下垂体-視床下部性だったということで、私の推測を超えておりました。

高橋先生のADLの的確な把握がReview of systemsにも繋がるというご指摘、詳細な病歴で複数の病態が重複(Add on)したか鑑別するという話は、なぜ詳細な病歴聴取が必要なのかについて改めて実感させられるものであり、特に若手医師にとって非常に勉強になったのではないかと思います。

志水先生から若手の聴衆に対する「不明熱では①血管内感染症、②深部感染症(膿瘍・骨髄炎)、③細胞内寄生菌(結核等)を考えよ」「血液培養陰性の血管内感染症として人畜共通感染症を想起すべし」、「相対的頻脈の存在からToxicな病態として内分泌疾患を想起すべし」、「膀胱癌ではBCG療法によるMycobacterium bovis感染症を想起すべし」等、クリニカル・パールに溢れた解説は本当に勉強になりました。

この症例は既に症例報告として掲載されているとのことですのでぜひご参照下さい:

Hirata R et al. Intravascular large B-cell lymphoma with endocrine disorder of the hypothalamus–pituitary axis required repeat random skin biopsy for diagnosis. J Hosp Gen Med, 3(4): 129-135, 2021

2例目は織田病院牧尾成二郎先生から亜急性経過の認知機能低下、意識障害、構音障害と急激な全身浮腫、血小板減少、腎機能障害を呈したTAFRO症候群の症例をご提示いただきました。

私は以前に類似した症状で受診したビタミンB12+ビタミンB1欠乏症の症例(https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/advpub/0/advpub_6660-20/_article)に気を取られて錨バイアスに陥ってしまいましたが、高橋先生、志水先生は素早く患者の病態の全体像を把握し、著明な浮腫と血小板減少からTAFRO症候群を最初から想起されました!加えてTAFRO症候群を想起した際に同時に鑑別すべき病態についても解説してくださいました。TAFRO症候群を想起するだけでもすごいと思うのですが、さらにIgG4関連疾患を含めて鑑別すべき周辺の病態についても解説していただき、本当に勉強になりました。

直観的に軸(Pivot)となる疾患を想起し、その軸を手がかりに、軸の周りにある類似した鑑別すべき疾患群(Cluster)を想起して鑑別してゆくという、志水先生が提唱されたPivot & cluster strategyの真骨頂をお二人の思考過程に見た思いでした。

志水先生のPivot & cluster strategyに関する論文:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23204855/

どちらの症例も非常に診断が難しく、担当医の執念が診断に繋がった症例であり、佐賀大学総合診療部では最初のカンファレンスでどちらの症例もすでに診断の道筋がついていたという多胡先生のコメントから、佐賀大学総合診療部の高い実力に加え、「自分たちが診断できなければ次はない」という矜持と覚悟を感じ、身が引き締まる思いが致しました。

司会の鋪野先生は巧みにディスカッサントの考えを引出し、聴衆のために解説を加えつつ、時間ぴったりにセッションを進めてくださりました。鋪野先生の名司会と多胡先生のマネジメントに甘えて私たちディスカッサントはいつものびのびとやらせていただいており、本当に頭が上がりません。

ご発表・ご登壇いただいた皆様と大会関係者各位に感謝申し上げます。

2月26日に開催される第24回日本病院総合診療医学会でも「症例検討から学ぶ診断推論戦略 by JUGLER」を開催させていただく予定ですので、ぜひご参加ください!

https://hgm24.net

文責:佐々木 陽典

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