感染症専門医試験に合格致しました!
本日、感染症専門医試験の合格通知が届きました!
これで念願の「総合内科専門医+腎臓専門医+感染症専門医」のトリプル・ボードを達成致しました!
私はこれまでもこれからも総合診療医として大学で仕事をし続けたいと考えておりますが、非専門医の私が、専門医資格をいただけることには意義があると考えております。
教授に「ヨーテンは2つも3つも専門医を取れ!」と言われてから、非専門医として2つ以上の専門領域の専門医資格を取得することは私の念願の一つでした。
その1番の動機は、教授が常々言っているように
「好きなことを一生懸命勉強して、その領域に責任を持てるようになるために、専門医資格は入り口にはなるが、専門医資格という紙切れそのものには大して意味はない。」
ということを、若い医師や学生さんに、身を持って伝えたかったということだろうと思います。
腎臓専門医を取得してから、その思いはより強くなっています。
専門医資格をとってからも研鑽を続けなければ本当の専門医であり続けることはできません。学会に参加したり、セルフトレーニング問題を解いたりするたびに、そして何より腎臓学会で発表するネタがない自分を見るにつけ、本当の専門医との距離を痛感し、その度に自分を戒めています。
今回、感染症専門医を取得しようと思ったきっかけの一つは、総合診療科には感染症指導医・専門医が豊富にいてくれて、聞けばすぐに最善の答えを教えてくれるので、甘えてしまっている自分に気づいたことでした。
「彼らと肩を並べたい。対等に議論がしたい。」と思って受験しました。
しかし、試験に合格してみて感じることは、むしろ
「資格をとっても、日々、難しい感染症の診療に当たっている本当の専門医には敵わない…」
ということです。
こうして「腎臓病と感染症がちょっとだけ得意な総合診療医」として、専門医試験を受けて資格をいただけたことで、
・専門医資格は資格を取ってからが本当の専門医キャリアのスタート(資格は入門許可書)
→自分は資格を持っていても所詮は素人…と気づけた
・専門医試験勉強や更新の為の勉強はとてもいい学修手段である
-その領域の知識の最低限のアップデートができる
-その領域の最近の話題を知ることができる
-期限や問題集があり、勉強のペースメーカーとなってくれる
・専門医の視点を理解することで非専門医として専門医への相談の質が上がり、非専門医としての価値が高まる(共通言語を理解することで疎通性が高くなり、心配事を理解してもらいやすい)
といった利点に気づくことができました。
家族を養ってゆく為にお金を稼いだり、医師としてのキャリアを順当に踏んで資格を取ることも大事なことです。
しかし、若い医師や医学生さんには
「せっかく医者にしてもらったのだから、資格とかお金とか、目先のことにばかり汲々として無難に生きるのではなく、自分が楽しみながら多くの人の役に立っていけるように、自信と勇気を持って、やりたいことをやって欲しい。」
と背中を押したいと思います。専門医試験に落ちたって死にはしないのですから。
資格0でも素晴らしい医師はたくさんいます。
資格なんてどうでもいいのですが、一方で自分を高め、戒める為のツールにもなりますので、新専門医制度の前の先生方は複数領域の専門医試験に挑戦してみるのもいいかもしれません。
前田先生、宮崎先生を初めご指導いただいた先生方、応援してくださった皆様、家族に感謝致します。
文責:佐々木 陽典
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広報誌The Expert令和3年11月号(No .145)に掲載していただきました。
病院広報The Expert令和3年11月号(No .145)に下記の記事を掲載していただきました。今回で2回目の掲載となり、今回は新型コロナウイルス感染症への対応と病院総合診療専門医制度について紹介させていただきました。
https://www.omori.med.toho-u.ac.jp/iryo_kankei/koho/od6k060000008ozf-att/Expert145-2.pdf
緊張で汗をダラダラかきながらの写真撮影でしたが、思った以上に顔写真の写りがよくて安心いたしました^^;
病院総合診療医による新型コロナウイルス感染症と専門領域の谷間への対応
2006年に東邦大学医学部を卒業して大森病院で臨床研修の後、臓器の枠に囚われずに患者さんの役に立てる医者を志し、聖地として憧れていた沖縄県(本島・石垣島)で5年半に渡って研鑽を積みました。専門医療機関であると同時に、多くの医療人が初めて患者さんに触れ合う教育機関でもある大学病院でこそ総合診療医の活躍が必要だと考え、2014年から当院総合診療・急病センターで臨床・教育・研究に励んでおります。
- 新型コロナウイルス感染症と総合診療
前回2018年に原稿を執筆させていただいて以降の最大の変化は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の襲来です。当院では総合診療・急病センターが呼吸器内科、救命救急センターとともにCOVID-19対応の中心的役割を担ってまいりました。総合診療医は「医師の海兵隊」「病院のインフラ」に例えられることがありますが、その例えが示すように、総合診療科はCOVID-19の診断・初期治療・病棟運営に関与し、COVID-19とそれ以外の疾患の狭間に身を置いてきました。COVID-19を意識しすぎるあまりに他の緊急疾患が見逃される状況を、私達はCOVID blindness(盲目)と呼んでおり、これをいかに予防するか、総合診療の重要な「診断エラー」研究として取り組んでおります。
- 病院総合診療医と診断のつかない愁訴への対応
高度に専門化された医療の恩恵は計り知れません。一方で、専門領域の谷間で苦しんでいる患者さんも多く、過度の専門化への反省から2018年には総合診療専門医が新設されました。しかし、病院を活躍の場とする総合診療医のキャリアは不透明でした。そこで、私自身も研修プログラムワーキング委員の一員として関わらせていただき、2021年度に病院総合診療専門医制度の設立に至りました。この制度では、病院管理を病院総合診療専門医に求められる特徴的な能力の一つに位置付けており、COVID-19対応での病院総合診療医の活躍も、その証左ではないかと感じております。
私自身も研鑽を続け、専門領域の谷間で苦しむ方々に寄り添える「やさしい医療」を実践し、後輩に病院総合診療の魅力を伝えてゆきたいと思っております。発熱、倦怠感、むくみ、腓返り、痛み、口渇といった原因不明の症状でお困りの際には、病名や診療科にこだわることなく、ぜひ総合診療科にご相談いただければ幸いです。
文責:佐々木 陽典
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11月10日(水)夕方、大学院生 竹内泰三先生が第72回東邦医学会総会にて、現在取り組んでいる研究を報告しました。
竹内先生は奥様が循環器内科医、その姉上夫婦もともに循環器内科医、そして義父が元循環器内科教授であり、何としても循環器領域での研究をしなくてはならない辛い立場でした。
循環器内科の池田教授が座長の労をとってくださいました。演題は「心臓長超音波画像のフラクタル解析による定量的数理解析」でした。
同僚の小松先生が甲状腺超音波解析で使用した解析方法です。超音波画像は肝臓に代表されるように、1枚の静止画像の内部エコーパターン解析から肝臓のダメージを推定する研究が盛んに行われてきました。一方、心エコーは動きを実際に見ることができるため、静止画像の解析がほとんど行われてきませんでした。しかし、虚血性病巣では病理学的に大きな変化が見られており、これは超音波画像への変化として描出されているに違いありません。
竹内先生は多数例の解析から、虚血性心疾患において、フラクタル次元が上昇することを明らかにしてくれました。
今後はさらに多くの疾患で解析を進めてくれることと思います。ご指導いただいた小松先生、ありがとうございました。
竹内先生、お疲れ様でした。論文にまとめましょう!
文責 瓜田純久
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消化器ナーシングに小松先生、斎藤先生、西江先生が執筆した腹痛、嘔吐、血便に関する原稿が掲載されました!
東邦大学医療センター大橋病院外科主任教授斉田芳久先生からお話をいただき、看護師さん向けの雑誌「消化器ナーシング」に当科医局員の先生方が執筆してくれた記事が掲載されました。カラフルで明快な紙面に仕上げていただき、綺麗な仕上がりに感激しています。
総合診療科の特色を活かして、症候からのアプローチとして、小松史哉先生には「腹痛」、斎藤隆弘先生には「嘔気・嘔吐」、西江龍太郎先生には「血便・下血」についてそれぞれ解説してもらいました。
機会がありましたら是非ご一読ください。
https://store.medica.co.jp/item/130112111?type=single
こちらの購入サイトで一部立ち読みができるようです。
小松先生、斎藤先生、西江先生、臨床業務で多忙な中、わかりやすい記事の執筆、お疲れ様でした。貴重な機会をいただいた東邦大学医療センター大橋病院外科主任教授斉田芳久先生、西尾様はじめメディカ出版消化器ナーシング編集室の皆様に感謝申し上げます。
文責:佐々木 陽典
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日本病院総合診療医学会雑誌 第17巻 第5号 2021年9月で巻頭言執筆の機会をいただきました。
学会誌の巻頭言を読んでくださる先生はそれほど多くないと思います。日本病院総合診療医学会雑誌 第17巻 第5号 2021年9月で巻頭言執筆の機会をいただき、通常の論文では書けないことを書いてしまいました。本音を言う機会は年齢を重ねるほどに少なくなり、本人も自己抑制的になります。青森の銘酒「八仙」を飲みながらの原稿です。何卒ご容赦ください。
文責 瓜田純久
総合診療は医学のリべラルアーツ!
東邦大学 総合診療・救急医学講座 瓜田 純久
会員の先生方が最前線で戦った新型コロナウイルス感染症ですが,日常生活や通常診療が大きく制限される状況が続いています。元来,医療人には道徳的信念や期待に反するような行為を強いられる状況への対応,診療の不確実性や告知など,医療者固有の葛藤や苦悩があり,これらがコロナ禍において増大し,修復困難な局面に何度も遭遇されたことと思います。多くの不条理を解決するため,当たり前と思っていることを改めて根底から問い直した方も多いことと思います。10 世紀後半のサレノス医学校を源流とする医学教育は,神学・法学・哲学に牽引されるようにボローニャ大学,パリ大学などへと広がりました。聴講のために学生が集まり誕生した大学ですが, 15 世紀の活版印刷の発明により本から学ぶことが可能となり,さらに産業革命の果実を得るため に技術者育成が急がれ,大学は衰退していった歴史があります。19 世紀,フンボルト大学が「人格陶冶」を掲げ,教育と研究を一体化させたゼミナール方式を取り入れ,大学が見直されます。医学 においても産業革命の原動力となったニュートン力学により,機械論的生理学が誕生し,経験的医療から科学的医学へと大きく転換します。フンボルト大学では人格陶冶の下,全人格教育を行うはずでしたが,視野の狭い専門研究者が多数誕生してしまいます。日本では産業革命の果実は軍需産業として速やかに受け入れられ,「明日役立つ学問」が推奨され,現在の産学連携,イノべーションに繋がります。国立大学では教養学部が廃止され,明確な理系優先路線が敷かれます。高度経済成 長を背景に,総合的知識を学ぶ姿勢を蔑視する風潮が広がり,科学者と教養文化との隔たりが大きくなりました。その姿勢が野放図に拡大した科学を生み出し,環境問題,遺伝子操作,核開発,石 油ショックなど,人類全体の危機に繋がったと痛烈に批判する哲学者もいます。多くの領域を学ぶことが理想とされたルネサンス期の全人格教育を見直し,基礎的教養を形づくり,人としての根幹部分をつくるリべラルアーツ教育が1970 年代から見直されています。しかし, 教養や基礎医学が削減されていく医学教育は,「人格陶冶」を目指すリべラルアーツ教育とは明らかに逆行しています。医学部教育では臨床実習優先となり,レジデント教育でも限られた疾患にエネルギーを集中する臓器別専門医教育が中心であり,フンボルト大学方式が色濃く反映されています。 臨床現場では見えない領域への理解が難しくなり,コミュニケーションエラーが生じやすくなって います。医学教育も未だ産業革命の熱狂の中にいるのかもしれません。
新型コロナウイルス感染診療において遭遇する多くの不条理な場面においても,複雑な背景を持つ患者さんへの医療を着実に実践する総合診療医は,リべラルアーツを担うことができる数少ない医療人であると,改めて痛感しています。幅広い領域からの投稿をお待ちしています。
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