
レジデント小松史哉先生が「医学教養6:臨床医学に役立つ複雑系科学入門」において、自己相似性、フラクタル解析について講義をしました。
6月17日(水)3時限目にレジデント小松史哉先生が「医学教養6:臨床医学に役立つ複雑系科学入門」において、自己相似性、フラクタル解析について講義をしました。昨年も同じように講義を担当してくれましたが、今年は遠隔講義のため、学生の反応がわかりにくく、勝手が違ったようです。

昨年は10名でしたが、今年はなんと1−3年生の41名がこの講義を選択してくれました。定員40名を超えた学生の皆さん、ありがとうございます。何だか東邦大学の未来に光が射したような気がします。
講義会場の多目的室殺風景ですが、1号室だけは背景に東邦大学のパネルが設置され、記者会見もできる会場です。

小松先生は殺風景な部屋でモニターに向かって、還元論から自己相似性、自己組織化、カオスなどについて解説し、臓器に分けずに病態を考える手法があることを力説していました。また、学位論文である甲状腺超音波像の解析の実際を示し、形態のもつ機能的な意義について、熱のこもった講義をしてくれました。

内科と総合診療の違いがもっともわかる講義であったと思います。お疲れ様でした。小松先生は7月1日から助教になります。来年の講義も楽しみにしています!
文責 瓜田純久
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レジデント繁田知之先生が臨床医学7の遠隔講義で診断エラーについてお話しました。
6月12日(木)2時限目でレジデント繁田知之先生が臨床医学7の遠隔講義で診断エラーについてお話してくれました。

遠隔講義はZoomを使って行います。医学部多目的室から配信しています。最初は学事課の中澤さんに操作方法を説明していただき、10:15に開始しました。

Zoomは遠距離恋愛のために開発されたツールのようですが、今では遠隔講義の定番となってしまいました。昨年は医学教養6で森岳雄先生と二人でとても楽しい講義をしてくれましたが、今回は対面式ではないため、とてもやりにくかったと思います。

配信する多目的室はこんなに殺風景です。これが4部屋並び、各学年に配信しています。

繁田先生の話は聞いているだけで楽しくなり、力が湧いてきます。難しいことを楽しそうな表情で話し、臨床現場と同じように潜在能力の大きさを感じさせる講義でした。
シラバス内容を紹介します。
学修項目・準備学修:診断エラーという言葉は一般的に、「個人の知識・技量不足による誤診や診断の遅延」というイメージがあります。しかし近年、いくつもの研究により、診断エラーは個人の力量が原因となるものよりも、データ収集不足や診断仮説、またその時の状況要因にも左右されることが分かってきています。さらに、CTやMRIに加え核医学の発達など検査の種類・質の向上により過剰に検査を施行する、または診断を画像検査に依存する傾向があることも一因となっていると思われます。本講義では、まず診断エラーの概略を理解し、診断エラーに陥る原因を説明できるようになることを目指します。そして、診断エラーを回避するための代表的なプロセスを説明できるようになることを目標として聴いていただければ幸いです。
医学部学生は教授の講義より、年代の近いロールモデルとなる先生の講義を熱望しています。来年は対面式の講義ができる環境となっていることを願っています。
この講義は臨床実習M5、M6にも話してください。総合診療と内科の違いがイメージできるように思います。繁田先生、大変お疲れ様でした。来年の講義もぜひお願いします。
文責 瓜田純久
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大学院生 小松史哉先生が学位論文を発表し、学位が授与されました。
大学院生 小松史哉先生が学位論文をToho J Medに発表し、学位が授与されました。

再受験と東邦大学医学部に入学した小松先生は、それまでの理学系の知識を駆使して、極めてオリジナリティの高いフラクタル解析を用いて、甲状腺US画像を解析してくれました。1205例の画像を全て自分で解析し、びまん性甲状腺疾患でフラクタル次元が上昇し、乳頭がんで最大となることを明らかにしてくれました。

また、年齢とともに甲状腺US像の次元が上昇することも発見してくれました。これまで主観的な記述が多かった甲状腺超音波像ですが、定量的解析をすることにより、リスクの高い病変を迅速に拾いあげることが可能になります。
研究費用はなんとソフト代33万円だけです。あとは全部小松先生が一人でまとめてくれました。生体の構造が自己相似性であることを前提とした、理論上は超音波機種や条件に左右されない方法です。古い超音波画像も再利用してまとめてくれました。本当にご苦労様でした。
学位審査もフラクタル解析の方法論について、質問が集中しましたが、小松先生は理路整然と、わかりやすく解説していました。これからは若手を指導することになります。オリジナリティの高い研究をする後輩を育ててください。
文責 瓜田純久
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World Journal of Clinical Casesに単純性虫垂炎と複雑性虫垂炎の臨床的鑑別に関する論文が掲載されました!
以前に急性虫垂炎と右半結腸憩室炎の臨床的鑑別点に関する論文を掲載してもらったWorld Journal of Clinical Casesに、同研究データを利用した単純性虫垂炎と複雑性虫垂炎の臨床的鑑別に関するPost hoc analysis的な論文が掲載されました!
単変量比較では、CT・超音波所見で複雑性虫垂炎(穿孔・膿瘍形成・壊疽性虫垂炎)と診断された症例では年齢中央値(34歳 vs 49歳)、発症—受診間隔(日)、心拍数、体温、血清CRP値が有意に高く、糸球体濾過率(腎機能)、血清Na値が有意に低いという結果でした。
これらの要因を説明変数としたロジスティック回帰では、CRPが唯一有意に高いオッズ比を示し、CRP値が高いほど複雑性虫垂炎に至っている可能性が高くなる、という結果でした。
個人的には
1) 以前に私が臨床研究デザインを初めて勉強させていただいたi-HOPEの福原俊一先生が「コホートは一粒で何度も美味しい」とおっしゃっていたのが印象的で、いつか一つのデータセットを利用して2つ以上の論文を書いてみたいと思っていたので、それが実現できたこと
2) Editorial officeから”We are happy to tell you that this paper will be given priority for publishing, with all publishing fees waived.”とのことで掲載料が全額免除になったこと
が嬉しかったです!(2についてはきっと教授と秘書さんが私より嬉しかったはず…)
https://www.wjgnet.com/2307-8960/full/v8/i11/2127.htm
文責:佐々木 陽典
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鹿嶋先生と執筆した症例報告が掲載されました。
当科医局員の鹿嶋直康先生と共同執筆した症例報告が日本病院総合診療学会の英語版学会雑誌であるJournal of Hospital General Medicineに掲載されました。
この症例報告“Non-perforated hemorrhagic gastric ulcer presenting with left shoulder pain and orthostatic dizziness, but without abdominal pain”は左肩の痛みと起立時のふらつきを主訴に受診し、左肩の痛みを内蔵疾患に由来する関連痛ではないかと考え、起立のふらつきから消化管出血による起立性低血圧を想起し、その組み合わせから出血性胃潰瘍を疑って早期に診断に至った症例です。
内視鏡検査で胃潰瘍が見つかり、その治療だけで肩の痛みが速やかに消失したことから、やはり左肩痛は胃潰瘍の関連痛だったのだろうと考えていますが、これまでに穿孔していない胃潰瘍による左肩痛は報告がなく、痛みが出た機序は不明です。私たちなりに教科書や過去の論文を調べ、穿孔していない胃潰瘍でも左肩痛を来たしうることとその想定されうる機序について提唱した症例報告であり、様々な雑誌で掲載に至らず、掲載までにかなり苦労しましたが、こうして形にすることができて嬉しく思います。
英語が得意とは言えない鹿嶋先生が一から原稿を書き上げて持って来てくれた時のことは今でも印象深く覚えています。鹿嶋先生は快活としていて気遣いができてコミュニケーション能力が高く、直感的にスピーディに仕事をこなすタイプであり、あまり深く物事を考える学究肌ではないと思っていたので、今回、一から推敲しつつ英語で症例報告を書き上げてくれたことは正直驚きでした。
現在は関東労災病院で糖尿病専門医を目指して修行中であり、さらにパワーアップして帰って来てくれることを楽しみにしています。本症例報告に関して学会発表から資料検索・論文執筆までお疲れ様でした!
執筆に際してご助言・ご指導いただいたJR東京総合病院陶山恭博先生、沖縄県立宮古病院本永英治先生、島根大学和足孝之先生、千葉大学鋪野紀好先生、南多摩病院國松淳和先生にも心からお礼申し上げます。


別刷りを片手に満面の笑みですね!
(写真撮影のためだけに関東労災病院から呼び出しました…パワハラ?)
文責:佐々木 陽典
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