子どものころ、医師を目指したとき、「どんな患者さんでも診たい、治したい」と、多くの人は思ったでしょう。しかし、今の医療現場は高度に専門化が進んでいます。それらは難病に対し、さまざまな治療の可能性を広げました。ただ一方で、心臓の専門医だから肺炎は診れない、糖尿病の専門医だから脳梗塞については責任を持てない、といった歪みも引き起こしています。そのようななか、総合診療科では、複数の専門診療科を横断するような合併症や、疾患をすぐには特定できないような症例を、全部引き受けています。そのため、あらゆる患者さんのあらゆる症例を受け入れ、総合的に診断し、治療を目指すことが可能です。
当院は大学病院ですが、地方の拠点病院としての役割も兼ね揃えており、救急搬送のほか、さまざまな外来の患者さんも受け入れています。そのなかで、外来の患者さんは約90%、入院される方でも内科系は85%が総合診療科で完結できます。救急搬送もこの科で約60%を受け入れています。救急の世界は、10分間の初動が重要です。それが間違った方向に走ると、不幸な事態も起こしかねません。そのような厳しい現場で高いスキルを磨くこともできます。当院のように、症例数が圧倒的に多く、幅広い経験ができる大学病院はめったにないと思います。医師としての初期衝動ともいうべき「どんな患者さんでも診たい、治したい」というマインドを忘れずに、臨床に取り組んでいただきたいと思っています。